泣きたい夜に、君に会いたい

かみっち

第1章 君は私の恋人になりなさい

 もう生きるのがつらい。

そんな事を思い始めたのは中学時代からだ。

なぜなら中学入学したときから今まで、母親が片親として育ててくれたが、母親の再婚で新たな父親ができ、中学入学と同時に他県へ引っ越し家庭内の環境が大きく変化をしたことがきっかけ。


 僕は親の都合で中学に上がると同時に、生まれ育った町から縁もゆかりのない土地へ引っ越しをした。引っ越した先は、人口2千人ほどの人達で構成している小さな町だった。だからこの町には、小学校は1つしか無く、小学校からそのまま上がってくるこの中学校に、よそから来た僕の居場所はなかった。また、入学してから初めの1週間くらいは、どこから引っ越してきたのかなど、たまに声をかけてくる人もいたが、1度や2度話して以降、僕にクラスの人達から話しかけられることは無かった。だから、僕は中学に入学してからずっと教室で1人過ごすことになって行った。

 

 親の再婚から数ヶ月、継父けいふと母親は毎日家には帰って来ては僕が寝静まったであろう時間になると、朝方まで言い争いを続ける。たまに深夜遅くまで起きていると必ず、お互い言い声を荒げて話しているのが聞こえてくる。僕はやっかいごとに自ら首を突っ込みたくはないので、静かに自室にこも、イヤフォンを付けてアニメを見て眠気が襲ってくるまで見続ける。いつも気がつけば寝ており、目が覚めて朝リビングへ向かうと、すでに継父は会社へと向かって家には母親と2人でいる。

母親ともあんまり仲は良くないので、特に話す事もしないため静かな空気が朝からながれる。そんな生活に僕は嫌気を刺しながら、もう家にはいたくないと思っていたが、学校でも僕は1人孤独に友達も作れず、毎日1人ぽつんと過ごすこと3年がようやく経ち、家からほどよい場所の公立高校へと進学した。


 高校へ進学しても結局は友達はできることはなかった。きっと自分のコミュニケーション能力がなさすぎるからだろう。僕は、もう何を楽しみ生きればいいのか分からなくたっていた。学校に行っても誰かと話すことはない。家に帰れば、母親と継父の言い争いが毎日行われている。最近はその言い争いも激化し始め、僕はもうこれ以上この世界を生きたくないと思うようになり始めた。


 そして時が経ち、高校1年生の冬、生きるのをやめることにした。

もう何のために生きているのかわからなくなった。

将来に夢も希望もない僕は生きるのを辞めるため、夜コンビニに買い物に行ってくると言って家を出て、近所の公園で缶コーヒーを買って最後に自分の生きてきた人生を振り返りつつ、どこで死のうかとコーヒーをベンチで飲みながら考えていると

「君、こんな時間に一人公園で何をしているのかなぁ?」

と声を急にかけてきた人が来た。

警察官なのではないかと内心ドキドキしながら振り向くと、そこには制服姿の女子高生が立って僕を見つめている。

僕は、何だ女子高生かと思い無視をすると

「聞こえて振り向いたくせに、無視なんて君、とってもひどいぞ」

と言ってまた声をかけてくる。

一体この人は何なんだろうと思いながらも、ずっとここで無視し続けても話しかけてくる人だったため、僕は仕方無く彼女の声に答えた。

「何のようなんですか?」

すると彼女は

「やっと話してくれた。会話してくれて嬉しいよ!」

そう言って、僕が座っているベンチにの空いているスペースに座り

「ところで君は一体、ここで何をしてるの?」

「私が遠くから見ている限りじゃ、死んだ魚のような顔をしているんだけど?」

この女子高生は何かを見透かしたかのように話しをしてくる。

何も知らないくせに、ズケズケと話してくる女子高生に、ちょっとうっとうしいと思い、僕は聞こえてませんよと言わんばかりに再び無視をすると

「ちゃんと聴いているの君、ずっとぼーっとしているような気がするんだけど?」

そう言って、彼女は僕に何度も「おーい」とか「ねぇ、無視するのひどいよ」「心配して声かけてるの無視するって、人としてどうかしてるよ、ねぇーって聞いてる?」としつこく声をかけ続けてきた。

とうとう僕は話しかけてきている女子高生に耐えきれず

「うるさいな、見ず知らずの人に貴女はそんなに話しかけるんですか普段から?」

すると彼女は首を横に振って

「私は誰にでも声をかけているわけではないんだけどな」

と僕を見て言った。

だが僕はそのうっとうしさに飽き飽きし、別の場所へ行こうと思いその場から立ち上がり歩き始めると彼女は僕に

「―君、本当は死ぬつもりだったんでしょ?」

僕はなぜこの人は僕の心の中で思っている事を、今ここで口にして話したんだろう。

なぜかそれが気がかりになり、つい聞き返してしまった。

「なんで、それを...」

すると彼女はほらやっぱりと言いながら

「これは嘘ではないんだけど、私には分かるんだよ。死にたいなって自殺願望を持ってる人の心が」

そう言って僕に説明をする。

だがそんな説明をされても、信じれるわけがないので「それってまぐれですよね」と聞き返した。

すると彼女はゆっくり首を横に振って

「まぐれと思うかもしれないけど、私はこれまでにも君と同じような事を考えてる人を何人も見てきて結局は自殺をしていく所を見てきたんだ。ある人は横断歩道が赤の時に渡り、車にひかれて亡くなり。またある人は電車にひかれて亡くなった。今まで自分に何か一言声をかけるだけで、その人の人生を変えることが出来たんじゃないかって、いっつも思っていた。だけど、結局私は何も出来ずにただ、見ているだけだった。だから今回は少しでも死にたいって思ってる人が、誤った道に行かないようにって思って私、君に勇気を持って声をかけたんだ...」

 今にも泣き出しそうな声で話す彼女の話に、僕は少し納得をしてしまった。

あまりにもリアルに話す物だから僕は彼女の事を少し信用してしまったんだ。

そして僕は彼女に訊いた。

「それで、僕も君が声をかけなかったら死んでたの?」

静かに頭を立てに動かした。

僕はやっぱり今日自分の人生を終わらすことが出来るんだ。

それがわかったので、じゃぁ貴女とバイバイですねと言った。

すると彼女は僕にビンタをし

「何言ってるの、私は君を殺させなんか絶対にしないし、もっと生きたいって思わせてみせる」

女子高生は力強い言葉で話した。

ビンタされた頬は冬だからか、もの凄く痛い。

僕は急に叩かれたので、一瞬状況がわからなかったが時間が経つごとに自分が何をされたのか理解した。

そして僕は急に人にビンタするのはダメですよと、頬を押さえながら話すと

「君が変な事を言うからでしょ」

強い口調でそう話す彼女に僕は何も言い返せず、ただすみませんとしか言えなかった。そんな謝るだけの僕に

「君にも色々死にたいと思った理由があるんだよね。それを教えてよ。私に力になれるかもだからさ」

唐突に優しさを出してきた女子高生に僕は思わず、この人やバイ人ではと思ったが彼女は僕を真剣な眼差しで見つめ続けてくるので

「気が向けば」

とだけ言った。

すると彼女は分かったと言って

「じゃぁ、一旦さっきのベンチに座って落ち着こう」

そう言われ僕はハイとだけ言って、さっきまで座っていたベンチに再び座り直ししばらくしてから僕は彼女に来た。

「貴女は、人の死に方とかわかったりするの?」

彼女は不適な笑みを浮かべてにやっとし

「分かるよ、君は今日電車にはねられて死のうとしてたんだよ」

「てか、今もそれを考えてるでしょ?」

今さっきまで考えていた死に方を彼女は見事的中させてきた。

だから僕は彼女の言っていることを信用し

「貴女は本当に、人の死が分かるんですね」

「だからさっきも言ったじゃん、嘘じゃないって」

彼女はそう言いながら僕に言う

「君は死ぬな、まだ君が死ぬには早すぎる」

 彼女の言葉が胸にジーンと染みる。

だけど僕はもうこの世界には耐えきれなかった。

家に帰れば夜な夜な母親と継父は朝方まで言い争いをして家で過ごす空気は重く、たまに継父から暴力をうける。また学校に行っても楽しいことは何一つない。

だから僕はもう死ぬことしか、生きる道はない。

そうなぜか、彼女に自分の今の辛さを話してしまった。

この話しを聞いていた彼女は

「君ってやつは本当に救いようのない人間だよ、そんな君に少しでも生きるのが楽しくなるように手助けをしてあげる」

彼女はそう自信満々に言った。

だから僕は彼女にそんな事をしても無駄だよと言うが

「それじゃ、1ヶ月私に君の時間をちょうだい。そしてもしこの1ヶ月が少しでも生きることが楽しいなと思ったら生き続けよ。でも仮に、もし少しも今の現状と変わらないのなら、私は君の自殺を無理には止めない」

「ねぇ、この条件で私に君の1ヶ月をちょうだい」

僕は彼女の言ったことに対して分かったと承諾をした。

すると彼女は嬉しそうに「約束だからね」と言って

「それじゃ、さっそくだけど1つ質問してもいい?」

「いいけど、何ですか質問って」

「それはね、君に今好きな人か恋人はいるのかって思って」

急に聞かれて驚いたが僕は冷静に

「いるわけないでしょ。自殺しようと考えてる人に」

「ゴメン、死ぬとか言う人にいないよね、聞いて悪かった」

彼女は苦笑いをしながらそう話した後

「それじゃまず、私と1つ絶対に約束というかこの1ヶ月間のルール的なのを守ってください。」

「まず1つ目は、今日から君は私の恋人だからね、他の女の子とイチャイチャするの禁止なのと、私のいない場所で勝手に死ぬのは禁止です」

「そして2つ目は、毎日夜8時にこの公園に集合」

「この2つだけは1ヶ月間絶対の約束ね」

そう言って彼女は今日はもう帰るねと言って、先に帰ってしまった。

お互い自己紹介もすること無く、さっさと帰っていった彼女の後ろ姿を見ながら、なんて不思議な子なんだろうと思った。

そして約束してしまったことには約束を破るわけにはいかないので、とりあえず僕は自販機で1本缶コーヒーを買って、さっきまでの急な出来事に心を落ち着かせて家に帰った。

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