鬼を産む

 身体を劈く苦しみが、鬼によって齎されたものだと思えば納得もできる。

 私の腹を裂いて出てきた、ゼリーのような塊は鬼になってしまった。今や知らない人はいない、私が産んだ塊の名前。

 寝起きのベッドに漂う腐卵臭が、今朝もあの鬼を思い起こさせる。

 見ずともわかる。

 玄関には近所遠方から来る野次馬と罵詈雑言、好奇心と正義感を履き違えたマスコミ、腐った生卵が匂いを撒き散らす。

 聞こえる声はいつも言うのだ。

 「殺人鬼などを生み出しやがって。」

 いいえ、違う、私が産んだのはゼリーの塊。

 塊を産んだことが殺人鬼を産んだことになるのならば、他のどの母親も、私だけじゃない、殺人鬼の母だ。

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