女学生
一人の女学生が電車に乗っていました。彼女は窓から外をじっと、顔を横に向けて見ていました。足の間に肩へ掛ける種類の鞄を挟んで、水色の傘が鉄色の床に突き立てられています。ブレザーもスカートも黒い制服で、胸元には黄色いリボンをつけていました。高校2年生の私は、彼女は私と同じく高校生で、同級かひとつ年下の子だろうと思いました。
私は進行方向を向いて、扉ひとつ分の距離があいた、彼女の真向かいに立っていました。なんとなく彼女が気になって、視線を合わさぬように彼女の様子を観察していました。時々ちらりと視線を上げて臆病にも彼女の様子を窺うのですが、幸い、彼女が私に気づいた様子はありません。
一体、窓の外に何があるというのでしょう。
外は灰色、しとしと雨が降っていて、どうせ町も灰色です。めぼしいものなど何もない上に、私たちは通学中なのですから、同じ景色を何度も何度も目にしているはずなのです。
しかし、彼女は窓の外を、飽きなく見ていました。私はそんな彼女の様子をひっそりとうかがい続けました。
一駅越えると彼女は電車を降りました。私は急に顔を上げて、彼女の電車を降りる背中を目で追いました。それから、ふと窓の外に目をやりました。彼女の見ていた景色を、見てみようと思ったのです。
車窓から見る外は一面灰色で、思った通り何もありませんでした。灰色の空に灰色の住宅街、灰色のアスファルト、電車の走る音すら灰色をしているような気がしました。
しとしとと雨が降っていました。
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