第4話 「大切なこと」


side悠月


トイレから教室に戻ろうとした僕は異変を感じた。

その異変の正体は華氷先輩だった。



華氷先輩が僕のクラスに来ていて、何やら普段僕のことをいじめてくる人達に僕のことについて聞いているみたいだ。




「ふーん。で、あなた達はゆづが鬱陶しいからいじめをしていると⋯⋯。」

「はい。本当にウザイんすよあいつ! 会長も何とか言ってくれませんか?」



あぁ、──────。先輩に迷惑をかけたくなかったのにこれじゃあ⋯⋯


これじゃあ何も変わっていないじゃないか⋯⋯。






僕は教室のドアにもたれ掛かり話を聞いていた。






やっぱり華氷先輩はかっこよかった。


幼い頃誰でも憧れるような一瞬で相手を倒す最強の勇者みたいに。



やっぱり僕にとって華氷先輩は憧れであり、目標でもある。



でも今回のことはだめだ。自分で解決するって決めたのに⋯⋯。また華氷先輩に迷惑をかけてしまった。







ガラガラ⋯⋯とドアが開く音がした。


頭上で声が聞こえる。



「バレてるわよゆづ。」


「っ⋯⋯!? 華氷先輩⋯⋯。なんで⋯⋯」

「ばかゆづ⋯⋯。どうせゆづの事だから『華氷先輩に迷惑はかけたくない』とか思ってたんでしょ?何が迷惑よ⋯⋯。ばか⋯⋯。言わない方が傷つくのよ⋯⋯。」

「華氷先輩⋯⋯ごめんなさい⋯⋯。僕、今回は自分の力で解決しなきゃって⋯⋯そう思って、だから相談しませんでした⋯⋯。」

「はぁ⋯⋯。私が言ったこと忘れたの?」

「どのことですか?」


そして華氷先輩は僕を優しく抱きしめ、こう言った。



「悠月は一人じゃない。悠月が辛いなら私が半分背負ってあげる。だから一人で抱え込まないの。」と。



僕は抑えていた涙を抑えきれなくなり流してしまった。



僕は大切なことを忘れてしまっていたようだ。


華氷先輩が幸せな時は僕も幸せ。

華氷先輩が辛い時は僕も辛い。


その逆も然り。


つまり僕と華氷先輩は常に感情を共有してお互い解決策を見いだしながら過ごしてきた。



なのに⋯⋯なのに僕は⋯⋯

「大切なことを忘れてました。」


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