第3話 「ゆづ救出大作戦にっ!」


side悠月


今日は体育館シューズを入れる袋が破られていた。明らかに人が破ったような感じだった。


日に日にエスカレートしていく嫌がらせ。

本当は誰かに相談したい。それこそ、華氷先輩。でも華氷先輩は生徒会のお仕事で忙しいのにさらに厄介事を増やすのは絶対に行けない。



ここ最近はできるだけ人との接触を避けて極力誰とも話さないようにしている。

話すのは生徒会のメンバーくらいだ。


あとは、島崎しまざきさん──────鈴音すずねが話しかけてくれるから談笑したりするくらいだ。



だから僕は誰にも相談しないでじっと耐えている。

人の噂も七十五日。それが本当ならあと一ヶ月と少しでこの噂も消えてくれるだろう。


僕はそう思い機械的に教科書を広げ、板書を写していた。






〜生徒会室〜

side華氷


「加藤くんちょっとお願いがあるのだけど」

私は生徒会でゆづの同い年の加藤くんにゆづのことで何が知ってることはないかと思い聞いてみた。



「あ、悠月そういえば最近学校でも元気ないですね。あとはなんか人を避けてるような気がします」


「そう⋯⋯。何があったのかは知らない?」

「そこまでは⋯⋯。さすがにクラスも違いますから、ごめんなさい。でも僕の友達とかにも事情は聞いてみますね。」

「えぇ。ありがとう加藤くん。」


やっぱり持つべきものは頼りになる後輩だわ。加藤くんに全て丸投げで任せっきりというのは良くないし、私自身嫌だから私は私で調査を進めることにした。






私はゆづの所属するクラスに来ていた。


「失礼します。このクラスに朔間くんがいるはずなんだけれどいないかしら?」


私はゆづが今教室にいないということを知りながらそう尋ねる。


「あ、朔間ならどっか行きましたよ! でもあんな奴に何の用ですか?」


(間違いないわね⋯⋯。)


「? どうしたんですか会長?」

「いえ、あの子生徒会のことを忘れているのかと思ってね。」

「あぁ、あいつばかだし、ありえるんじゃないですか?」


(かかったわね⋯⋯。)


「そうなのね。そこであなた達に相談なのだけれどあの子普段どんな様子かしら?」


私がそう問いかけるといかにもクラスの中心人物らしき男の子がゆづの普段の様子について事細かに教えてくれた──────ご丁寧に自首もしてくれた。




「ふーん。で、あなた達はゆづが鬱陶うっとうしいからいじめをしていると⋯⋯。」

「はい。本当にウザイんすよあいつ! 会長も何とか言ってくれませんか?」


「えぇ。良いわよ。いいことを教えてあげる。」

「本当ですか!?」



そして私はスマホの画面を見せた。



そこにはたったの三文字、だけどこのクラスの人達にとって私は味方ではないと理解させるのには十二分の三文字。録音中と表示されている。




「えっと⋯⋯会長⋯⋯。どうゆうことっすか?」

「ん? 録音させてもらったわ。私はゆづの普段の様子について聞いただけなのにご丁寧に自首までしてくれて助かったわ。ありがとう。」


後ろで雑音が聞こえるけれど関係ない。


私は踵を返して教室を出た。






「バレてるわよゆづ。」


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