第1話 「当たり前の光景」


今回は悠月視点に戻ります。

------------------✁︎キリトリ線✁︎-----------------

また僕の名前が聞こえた。クラスの中心人物達がガヤガヤと騒いで、楽しそうに陰口を言う。


当たり前となったこの光景に誰かが疑問を抱くわけでもなく時間は流れていく。



時の流れは時として幸運をもたらしてくれるが時として残酷だ。

その典型的な例が今のような時だろう。



時が流れれば自然と忘れられる。そう思っていた。だけどそれは違っていて、時が流れれば必然的に僕に好意を寄せてくれる人達は言葉にしてくれる。それはすごい嬉しいことだからいい。


でも違うのは女子からの告白に比例して男子からの評判がどんどん悪くなっていくこと。



噂は尾をつけて泳ぎ出す。


まさにその通りだ。根も葉もないことを言われている。



曰く『朔間悠月は女子を弄んで楽しんでいる。』

曰く『朔間悠月は彼女が何人もいる。』

などなど⋯⋯。どれもこれもまるで小学生が考えるようなバカ見たいなことばかりだ。

よくもそんな馬鹿みたいなことを大声で話せるな。ある意味関心すら覚えてしまう。

その言葉を鵜呑うのみにする方もする方だ。


第一ぼくにそんなことをする度胸や勇気があると思っているんだろうか⋯⋯。



周りに僕がどのように映っているのか、とても気になる。




そんな憤りを覚えながら胸の内のわだかまりを何とか押さえつけ、机の上に教科書とノートを広げ一人、耳に着けたイヤホンから流れてくる音楽に耳を傾けていた。




季節は少しずつ移り変わり、少し走ると汗ばむ季節になった。


僕は四季の中だと夏は一番嫌いだからそれも僕をイライラさせる原因になっている。

夏が嫌いな理由は単純で虫が多いからだ。僕は虫の中でも蝉が最も苦手で蝉の死骸も無理だ。



それに昔、まだ蝉の死骸なら行けた頃、友達に蝉の死骸を投げられてそれがトラウマで未だに克服できていない。



別に克服しようとも思わないから一生蝉を恨みながら生きていくことだろう。



そんなことは置いといて、窓の外を眺めると前まではピンク一色で彩られていた木々が今では青々としており、衣替えをしていた。


またまた個人的な話になるが僕は春が好きだ。桜の木の下で食べるお弁当程美味しいものは無いと思っている。


それに昔、華氷先輩とよく真ん中に大きな桜の木がある公園で遊んだことも僕にとって春が特別な理由だ。




僕は現実から目を背けるように窓の外を眺めていた。

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