第13話 「悠月と華氷」

僕は人見知りだ。それもかなりの。生まれつき人見知りだというのもあるけどそれが酷くなったのは小学生の時だった。






僕は見た目が女の子っぽく、男子たちと混じって遊ぶのは得意ではなかった。だから外遊びよりも中でお絵描きをしたりする方が楽しかった。


そのこともあってクラス内の男子からは避けられていた。直接いじめを受けたとか、そんなことではないけど陰口を言われていたり、仲間外れにされたり、そんなところだ。


唯一男子でとても仲の良かった友達がいた。その友達のことを僕は信頼していたし、あの頃の僕にとってまともに話せる数少ない友人だった。それこそ、僕は親友だと思っていた。


でも、結果としてそれは違った。




裏切られた。




見てしまったのだ。その友達が僕の陰口、文句を言っているところを。




その時、僕の中で何かが崩れた気がした。




僕はその場から逃げ出した。




しばらくは誰とも会話をしなかった。



華氷先輩とも。でも、華氷先輩はそんな僕を優しく抱きしめてくれた。


『悠月は一人じゃない。悠月が辛いなら私が半分背負ってあげる。だから一人で抱え込まないの。』


この言葉が僕を救ってくれた。



一つ年上の僕以外には塩対応。そんな幼なじみを恋愛対象として初めて見た瞬間で、僕の初恋だった。



それからは毎日華氷先輩と過ごした。


華氷先輩が小学校を卒業した時、しばらく会えないことを悲しく思ったし、寂しかった。ましてや華氷先輩と僕の通う中学は違う。


華氷先輩は中学から私立の神明に行くことになっていて、僕にそんな頭はないから中学は公立の学校に通い、高校から神明に行こうと決めた。


三年間会えなくなる。


そう思うと胸が締め付けられた。



でも、その間に自分を変えて華氷先輩を驚かそうと思っていた。



やっぱり無理だった。僕はどこまで行っても僕だった。










これからも僕は人見知りをするだろう。


もしかしたら悪化するかもしれない。


でも、僕は一人じゃない。


僕には最高の先輩が居る。だから、もう少し頑張ってみようかな。






僕の恋が一歩、進んだ瞬間だった。

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