第12話 「島崎鈴音とプリクラと」

- 第十二話 -

華氷先輩との放課後デートはこれ以上ないほど楽しくてルンルン気分で帰ってきた。


(あぁ、僕って本当に華氷先輩が好きなんだな。)

最近こんなことをよく考えるようになった。ことある事に『こんな時華氷先輩なら⋯⋯』って考えたり、常に華氷先輩のことを考えていたりするからだ。


まぁ、華氷先輩がいるという理由だけでこの神明を受けたんだからその時点でよっぽど好きだってことには気づいてたけど⋯⋯。


「おっはよー! 朔間くん!」

「あ、島崎さんおはよ!」

今日も今日とて朝からぼっちな僕は最近恒例となりつつある朝の挨拶を交わして昨日撮ったプリクラを眺めることにした。


「およ? それは誰とのプリクラかな?」

(し、しまった!? 島崎さんいたのかよ!)

「な、なんでもないよ⋯⋯」

「まぁ、だいたい分かってるけどな。うん。どうせ生徒会長やろ?」


島崎さんは周りに人がいないからか慣れた関西弁で話してくる。それが少し威圧感があって怖かった。


「う、うん⋯⋯。誰にも言わないでくれる?」

「ぐっ⋯⋯うん! 約束する!」

「あ、ありがとう!」



その翌日、華氷先輩と登校し、席についてスマホをいじっているとまた島崎さんに話しかけられた。


「そろそろ名前で呼んでもいい頃合いだと私は思う。」

「いきなりどうしたの?」

「ほら鈴音って言ってみ?」

「⋯⋯」


僕に女子を下の名前で呼び捨てはハードルが高い。恐らく島崎さんはそれを分かって言っている。

島崎さんは『きゃあー照れてる!』なんて言って楽しんでいたから十中八九からかいたかったんだろう。


「まぁ、悠月が言わんくても私は『悠月』って呼ぶけど。」

「っ!?」


呼び方が変わっただけ。それは分かってる。でも、何故かこう、むず痒いと言うか⋯⋯なんというか、どうも表現しずらい感覚に襲われる。


「島崎さん⋯⋯僕は、まだ無理だけど頑張るよ。」


「うん! いつでも待ってるから悠月のペースで頑張りや!」

「うんありがと。」


(まだこんなことをやってるのか⋯⋯何してるんだろ僕⋯⋯。)


僕は少し嫌なことを思い出したので、華氷先輩とのプリクラを見て癒されてから少し目を瞑った。

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