第1話 「普段の様子 華氷side」

「好きです。俺と付き合って下さい。」

はぁ。うんざりだわ。私には好きな人がいるって言ってるのにこの男子共は⋯⋯。何度言っても懲りないわ。


「あら残念。私はあなた嫌いだわ。さようなら。」

そう軽くあしらってその場を離れた。塩対応だとか、氷姫だとか、色々言われてるみたいだけどそんなのどうでも良くて。私はまだ入ってきていないけれどこの四月から入学してくる一年生の可愛すぎる後輩。朔間悠月さくまゆづきが好きなんだから。


ゆづったら本当に可愛いの。いつも女の子みたいな声で「華氷はるひ先輩!」って言ってしたってくれる。だからこの一年、副会長無しという異例の形で生徒会を運営してきた。これもゆづにやってもらい、必然的に私のそばにいてもらえるようにするためだった。


ゆづがこの叡明えいめい学園を受験すると言ってくれた時は嬉しすぎて泣いた。そのくらい嬉しかったの。


私はつまらない授業を受け、待ち遠しい四月を心待ちにしながら今日も生徒会室に向かう。

今日は来季の予算の決定と、各行事の日程の調整がメインなの。


私は生徒会室に到着してドアをノックする。


「どうぞ。」

中から声が聞こえたので誰かがもう来てるんだろう。

「失礼します。」

そう言って私は生徒会室に入る。中にいたのは書記の河本かわもとさん。この人は私と同じ一年生。はぁ、あと一ヶ月後には二年生だ。

またそんなことを考えていた。


「会長⋯⋯。なんで最近ニヤニヤしてるんですか?」

「は、はぁ? に、ニヤニヤなんてしてないわよっ! バカにしないでくれるかしら?」

「はいはい。分かりましたよ。あ、もしかして後輩君、入ってくるとか⋯⋯?」

「なっ⋯⋯」

「ははん。図星ですね⋯⋯。」

な、なんでわかったのよっ! この子のことは仲が良くて確かにゆづの話はしたけどっ! 変なところで勘がいいのよ!


「そうよ。悪いの!? 私はずっとあの子が入ってくるのを心待ちにしてるのよ!?」

「そ、そうですか⋯⋯。でも、なんでそんなに気に入ってるのですか?」

「それは⋯⋯。」

それは、恥ずかしい。ただ幼なじみなだけで、小さい頃から一緒だから⋯⋯。そんな単純な理由だから、言える程じゃない。


でも、いつかは堂々と告白を断る時に「かれしがいるから」と言えるように、もっとアピールして、ゆづに惚れてもらわないとっ!


私はそう決心して、会議にのぞんだ。



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