彼の夢を見た日
私には、好きな人がいる。
顔はたいしてかっこよくないし、体つきも鍛えてるとは言えない。
髭だって、夕方に会うと触ったらチクチクするんだろうなと思うほど伸びている。
触ったことはないけれど。
でも、何故かそんな彼のことが私は片時も忘れられない。
もう、半年以上会っていないのに...。
授業中、彼は私のノートを覗き込んできて、どこまで出来た?
なんて、声をかけてくれたりもした。
でも、時々、
え、こんなのも出来ないの?
なんて、煽ってくる言い方もしてくる。
少し、いらっとするけれど、私は彼のそんなSっぽいところに惹かれたのかもしれない。
...先生。
また、声をかけてくださいよ...。
私の学校から彼がいなくなって、半年が過ぎた。
だんだんと、彼の夢を見ることも減ってきた。
でも、今日。
久しぶりに彼は、私の夢に来てくれた。
私は、何故か彼にお姫様だっこをせがんでいて、彼も何故か私の要望に答えようとしてくれた。
いつもだったら、恥ずかしくて、お姫様だっこなんて言葉、口が裂けても言えない。
それに、体重も気にしてしまう。
彼だって、無気力の塊みたいな人間だから、私の謎めいた要望になんか絶対に答えてくれない。
この謎でしかない状況は、夢ならではなのだ。
夢の中で、私は彼にお姫様だっこをされた。
その時、私は、彼を思いっきり抱き締めた。
この手を離してなるものか。
今離したら、あなたは、また、私から離れていってしまうでしょう...。
そこで、目が覚めた。
言葉に出来ないほどの喪失感。
私の世界は、もう、あなたなしでは色づかない。
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