23話
取引。
人類の文明を常に回してきた屋台骨だ。ほとんどの行動は取引の結果であり、何ならば
シミュレーション型デスゲームの初期において、取引は基本的に
……さて、物々交換において、ありとあらゆる
しかし。
一つの
それは単純な
◆
俺の目の前に表示された【人権取出】ボタンについて、必死で考えを巡らせる。
そうだ、シミュレーション型デスゲームでは、理屈の上では
だからシミュレーション型デスゲームでは、さまざまな特殊方法を使って人間取引を処理して来た―――例えば特殊なウィンドウを使用するとか、アバターの
あくまでも、プレイヤーの
つまり、この【人権取出】ボタンは……文字通り
◆
アノ。
非常にィ……その、重大なインシデントが起こった。
俺も興奮している。
事を説明しよう。俺がこのボタンについて話した結果、ちょうどデカい倫理的問題に立ち向かっており話題を変えたがっていた検証ゴミ達はこれ幸いと【人権取出】ボタンの検証を始めた。
その検証の結果分かったことは……ァー、次の三つである。
・【人権取出】ボタンを押すとインベントリに【人権バッジ:○○(プレイヤー名)】というアイテムが追加される(実体化可能・スタック可)
・【人権バッジ】は対象者に対し簡易なコマンドによる命令が可能で、具体的に言うと「○○を譲渡する」とか「○○に向かう」とか「自殺する」とか
・【人権バッジ】は
・【人権バッジ】は次世代以降のプレイヤーからも入手可能
ア~~~ごめん三つって言ったけど四つだったわ。あるよね~~~~発表とかの時に内容考えてないのにとりあえず「三つあります~~~」とか言っちゃって実際は七つ分くらい話しちゃう時、そういうときに限って動転しててよくわからんことを話してたりするんだよなぁ……つまり
まぁその、何だ……プレイヤーを無限に
俺が脳をバグらせていると、
◆
ゲーム内時間で、1週間後。
目を開けば、
俺は
◆
さて、今日はマンモス狩りである。人権バッジがいかに万能でも、流石に食用するわけにはいかない……そもそも破壊不能オブジェクトだしな。荒らしが出したカニバリズム案も、どうせ人権を奪ってる時点でもう色々とダメなのに『直接殺すのはやだ』とかいう生命を侮辱しているとしか思えないものすごく傲慢な理由によって却下された……荒らしは『人権バッジで建築を行う』っつー明らかに
まぁとにかく、今はマンモス狩りだ―――気持ちを切り替えて
「えいえいおー!!!!!!!!!」
ゴミ共が勝鬨を上げている。俺もそれに乗じ、必ずや肉を手に入れてみせると意思表示を行った―――
空が、晴れていた。
◆
マンモスが絶滅していた。
まあ、あの
はい
イヤ、おかしいとは思っていた。このゲームは文明発展シミュレーションデスゲーだ、現実におけるそれの数十倍の速度で文明が発展する―――しかし、文明の発展には時として
その
……もしも『文明の発展度に応じて生態系が変化する』という俺の推測が正しかったとして。
答えは、ノーだ。つまり、人権ビルの乱立によって、ほとんどの動物は絶滅危惧種になるか、もしくはすでに絶滅した……という事になる。
どうする?
◆
人権文明に冬の時代が訪れた。
この
「だ~~~か~~~~ら~~~!!!!!この危機を乗り越えるためには昆虫食しかないの、昆虫食!!!!」
ドーナツ型人権テーブルの一角、起立したゴミが吠える。現在、ゴミ共+俺による食糧会議は混沌の様相を呈している―――俺はゴミ共と共にザワつきつつ、議長ゴミの方を見る……議長ゴミはなんかわかってる風に頷きつつ、挙手してるゴミの内一人を適当に指した。指されたゴミがようやくかァ~~~みたいな感じで両腕を下げつつ、昆虫ゴミに立ち替わって続ける。
「イヤ~~~昆虫食は厳しいと思うよ俺は、だってアレあくまでも大規模かつ自動化された設備でしっかり行うからまともに食糧源になるんであって……今のこのタダ破壊不能な素材だけが大量にあるだけの状況じゃまともに機能しないでしょ」
フ~~~ム。俺は考え込んだ。昆虫を食うっつーのはあくまでも発展した科学文明の最終手段、と言う所は実際のところある。このゲームにおけるプレイヤーの状態は
「ヤそうは言ってもサァ~~~。もう限界に近いじゃん、限界に。果実ももうすぐなくなるし、本格的に雑草と木の皮で生活する必要が出てくるぞこのままだと……何もやらないよりは昆虫食った方がいいって」
ゴミとゴミの議論が
「だから
荒らしが割り込んできて言った。お前は引っ込んでろや!!!!!というか人権牢屋に閉じ込めといたはずなのにどうやって破ったんだ……?????俺は糾弾(誤用)しつつ困惑した。荒らしはバカにしたような表情で答える。
「
アァン???俺は荒らしの横を見た。そして仰天した。人権テーブルをぐるりと囲むゴミ共が、一人残らず同じように仰天している―――白熱した議論なんて既に過去の代物だ。そこにいたのは、他でもない―――
「プレイヤーの皆さんに、お知らせがあります」
―――
人権囲炉裏の中で、橙色が弾けた。
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