22話
「あなた方にとって、デスゲームとはいったいどのような物でしょうか」
俺と同じことを考えたのだろう……ゴミ共からは疑問は一つとして上がらず、代わりに質問の答えが伝えられていく。
「どのようなって……"真実"だろ?」「デスゲームは"デスゲーム"そのものだァ……それで十分なのさ」「"人生"かな……ッァ」「そのッァって何?」「ちょっと待て今どうやって発音した」「理論上最強のゲーム」「終着点」「チューリングマシン!!」
ゴミ共が思い思いの考えを発表し、曇り空とは似つかわしくない騒がしさが広場に漂い始める―――いいね、そういうの好きだぜ。俺もゴミ共と同じように、「もう一つの現実!!!!」と叫ぶ。
その時である。
諸々のゴミ共の答えを興味が有るような無いような微妙な表情で聞いていたGMが、唐突にこちらを指してきた。エ、俺????一個後でも前でも左でも右でもテクスチャの裏側でもなく俺?????俺が確認を取ったところ、GMは頷き―――言った。
「
ゴミ共が静まり返る。ウーン曇り空にマッチした雰囲気……GMが続ける。
「デスゲームは
こいつ……かなり
四天王GMが続ける。
「しかし。確かにこの考え方は面白い―――面白いが、現実において非常に重要な一つの
お、オウ?俺はちょっとたじろいだ。し、四天王GMさん……思想がっ!!!思想が強いでヤンス!!!!このタダでさえ自分からデスゲームに飛び込むような激ヤバ集団が大半を占める空間で……!!!!思想を!!!!思想を強めないで!!!!しかし俺の願いもむなしく、四天王GMは若干ヒートアップしつつ続ける。
「しかし―――死ぬために生きるということは、つまり
四天王GMの熱弁にゴミ共がザワつく。俺もザワつく。イヤもークッソ強い思想に気圧されてるって言うのもあるけども、何よりその……
「つまるところ、こうです―――
このゲームのプレイヤーは、
いいんですか!?!?!??
俺は困惑した。イヤこう、もう何もかもが"ダメ"だよなァ~~~~って言う。プレイヤーを増やすってのがもうまず……"ダメ"じゃん、具体的に何がダメなのかってもう……ツッコミどころが多すぎるんだよなほんと……!!!!!
そんなふうに俺と共に困惑の絶頂に立つゴミ共の中から、一人のゴミが歩み出て―――挙手をした。どうも何か質問をしたいらしい。四天王GMが無表情にそのゴミを指すと、ゴミは質問を開始した。
「その
論点そこなの?
「まだですね」
「じゃあいいや」
いいの?
俺は困惑したが、なんかもう周りが「いいよね~~~~」みたいな雰囲気になってたので空気を読んだ。曇天はいつの間にか晴れていた。ま、まぁチューリングテストを突破したってなら少なくとも
「そこのゴミ―――暇なら検証、やろうぜ」
そういうことになった。
◆
俺はシステムメニューを1.2秒ほどスクロールしたところに割とデカデカと表示されている「繁殖」ボタンをタップした。
目の前の女アバターの検証班ゴミ――中身は不明――も同じ動作をする。
ポンッ、という間抜けなSEが俺と検証班のゴミ共がたむろす
ちょっとこれをプレイヤーと呼ぶのは無理があるのでは……???呆れる俺の前を検証班ゴミが慌ただしく行ったり来たりする。そして3分としないうちに彼らは測定を終え、検証班のリーダー的なゴミに報告を行う。
「えー、繁殖実験サンプルNo.7の体重はNo.1~6と全く同等の模様、親を務めるゴミは毎回交代させてるが身体的特徴に変化が無いので多分同じデータを使いまわしてると考えられる……ステータスについては未確認」
「フム……ちなみに体重はどうやって計ってる?」
報告ゴミは無言で洞窟の一角を指差す―――そこには、なるべく真っ直ぐに近い棒を組み合わせて急遽作られた
リーダー的なゴミは頭を抱えて言う。
「……とりあえず、まともな計測装置を入手する必要があるんじゃないだろうか」
このデスゲームのジャンルは
シミュレーション型というのは、プレイヤー一人一人を駒と見做すことによって、
「もっともな話だな……そして計測装置のためには、とにかく文明を
そして今回のシミュレーション対象は……
俺が考えていると、さっきから
「思うんだけど、
―――激ヤバ倫理集団こと
……そう、この
リーダー的なゴミがちょっと引きながら答える。
「ヤこう……倫理!!!!!倫理がもうダメだから、ダメ!!!!!!ナチュラルにカニバリズムしないでくれ!!!!!お前らの文化マジで怖すぎるんだよほんと……!!!!!!」
いやこれちょっとどころか
「ヤだなぁ、基本的にこういう荒廃した世界で安定した食料供給は急務だぜ?―――例えば遥か昔の人類は、農耕によって生活の安定を得た。その
フム……????俺はちょっと妙に思った。荒らし共は、基本的にゲームの調整ミスに付け入って悪事を働くのを嫌う……筋金入りの原理主義者なのだ。なのに
「いやアノ、お前ら
と聞いた。荒らしは答える。
「まぁダメと言いたいところなんだが……どうもこのゲームのGMは『死ぬために生きる』っつー哲学を信奉してるようだからな。第二世代以降のプレイヤーが死ぬのも当然想定済みだろう―――つまり
な、なるほどなぁ……俺は納得しかけたが、イヤそれで本当にいいのかと自我に急制動を掛ける……このゲームにおける赤ん坊は、要するに
俺は一旦考えを整理するため、システムメニューを軽くいじくることにした。軽くアニメーションを付けてウィンドウが展開し、膨大な長さのページが最新技術をもって一瞬のうちに読み込まれる。エート【インベントリ】【ステータス】【熟練度】【ヘルプ】【オプション】【繁殖】【メモ】【アイテム取引】……このアイテム取引っての気になるな。ウィンドウのリアクトインプッタをポチり、アイテム取引メニューが表示される。
ナ~~~ル程他プレイヤーとアイテムのトレーディングとか金銭の受け渡しとかができるわけねハイハイハイハイ……【アイテム】【申請する】【届いた申請(0)】【各種設定】【ヘルプ】……ボタンが諸々存在する。ってアレ?【ヘルプ】まででボタンは途切れてるのに、なぜかページが結構下まで続いている……何だろう、スクロールして見るか。
◆
そうやって俺が、軽い気持ちで指を忙しく動かし辿り着いた最下層には……こんなボタンが、設置されていた。
【人権取出】
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