20話
VRシステムには、大別して二つのゲームジャンル……というかゲーム
一つが【
もう一つが【
VRでソシャゲを実装するとなると、ほとんどの場合において採用体系は【白い空間】型である―――スマホのタッチパネルの代わりにウィンドウのリアクトインプッタをぺふぺふやって操作し、【完全没入】のようなサウンドエフェクトの
こいつのスマホと比較した長所には、「思考加速」だとか「環境設定」だとか「操作性」だとか色々あるが―――そのうち一つ、あくまでも一度ダイブしたうえでゲームをプレイするが由の「
逆に言えば、今日この長所は
◆
この白い部屋から、
そう……俺はゲーム本体と同時展開したWebブラウザウィンドウから視線を外し、辺りをぐるりと見回した。他の【白い部屋】モデルと大差ない……いっそ同一とすら言っていい殺風景な景色。そこから
そもそも製作者が
そこには、こう表示されていた。
【正式サービス開始記念!!!3日連続20連ガチャキャンペーン!!!】
◆
「リセマラしたい……」
呟きは白い部屋を縦横無尽に跳ね返り、若干
チュートリアル分10連、サービス開始記念キャンペーンで20連、パネルミッションコンプリート報酬10連、更に初回ログイン時限定SSR確定チケットで1連、パネルミッション『チュートリアル』クリア報酬のチケットで1連……合計42連分は、SSR2体、SR11体、R29体という惨憺たる結果に終わった。SSR確定チケットのことを除外して、「41連でSSRが一体当たった」と考えればSSR当選確率が3%くらいなら割と多い方なのではないか?……そんな疑問が頭をよぎったが、3%で41連引いた時の期待値は1.23だからそもそも余裕でリセマラ圏内だし―――それをいったん無視しても実際の所、ガチャメニューでアホみたくスクロールした先の最下層にこっそり設置された「提供割合表示」ボタンを押して得た情報によれば、ガチャの当選確率は、
【==恒常ガチャ提供割合==】
【◇SSR:3.00%×1.50(事前登録者10万人達成キャンペーン)→4.50%】
【◇SR:12.00%】
【◇R:85.00%】
とされており、見ての通りSSR当選確率は4.5%になっているから41連したときの期待値は1.845になるはず―――そして1.8以上という事は実質2以上なのでやはりリセマラ案件である。クソがッ!!!!!!俺はキレた。というかよく見るとこの表当選確率の
……待てよ……???
……このガチャ結果については、VRゲー掲示板に「【ゴブラン】これで初めていい?」ってスレを立てて画像を貼った俺に対するゴミ共の「生きてて恥ずかしくないの?」「人生リセマラどうぞ」「詰んだな」などの心温まるお言葉の数々によって「爆死」という判定が下されている……うう。俺は硬い床に項垂れた。orz......い、いやまだわからん。ひょっとしたらこの二体のSSR……もっと言えばSRあたりにぶっ壊れキャラがいる可能性もある。いる可能性もあるんだ……!!!!俺はバーチャル涙を拭いながら「編成」画面を開いた。
◆
俺はキレた。
なぜかって?
いや……厳密にはそこは理由の要ではない。確かに調整として極めて理不尽だが、デスゲームとはそもそも理不尽なものだ。
俺がキレているのは、そこではなく……
【GAME OVER...】
【300示量石を使ってコンテニューしますか?】
【あなたの所持示量石:829→529】
【(※示量石が足りない場合、〈ストア〉で購入が可能です)】
【[はい] [いいえ(死にます)]】
このデスゲームが
……というか、もうこれは
そうだ、このゲームは最早地雷行動ランキングとかそういう物の手が届かないレベルで、他と
―――
そもそものクソ高い難易度設計、これが既に「課金してガチャを回して強くなってね」と暗に要求している……!!!コンテニューにしたって、
「従来のデスゲームでは死ぬところを生き返るようにして見ました」
じゃない、
「従来のソシャゲでは
と考えられる……!!!!そうだとしたら納得がいく、「いいえ(死にます)」ってのはこっちを舐めてるんじゃない、
◆
俺はこのゲームはクソゲーだと思ったのでカジノに籠ることにした。
【PORKER】
【♠K ♥7 ♥3 ♣2 ♦7】
【捨て札を選んでください】
ヤもーマジでさァ、やってらんねーわ、っつー。デスゲームを課金制にするって方針自体を貶すつもりはないよ、最近だとちょうどアミューズメメントとかVRツクールの課金システムでシーズンパスを売ってたし。いやそれにしたってさぁ……いやなんというか、ゲームそのものを否定するつもりはないよ。ただ俺に合わなかったってだけだもん。ただまぁ……うーん……。俺はもにょりつつウィンドウを確認し、三つのカードを
【PORKER]
【XX ♥7 XX XX ♦7】
【捨て札を処理します】
さあ来い来い来い来い……!!!!俺が軽く興奮状態に入りつつウィンドウを見つめる間にも、カードはそのスピーディなアニメーションを着実に進行させていき―――
【PORKER】
【♦2 ♥7 ♣Q ♣4 ♦7】
【ONE PAIR】
【LOSE......】
【再挑戦しますか?】
クソがーーーッ!!!!!!!!俺はキレた。もう一回だもう一回!!!!!
「↻もう一度」ボタンを比類なき程の正確な精度でタップ、再び5枚のカードが配られる―――
【PORKER】
【♦J ♥2 ♣J ♠10 ♥J】
【捨て札を選んでください】
オッ?俺はちょっと驚いた。初手でJのスリーカードが出てるじゃんラッキィ~~~~。このゲームのポーカーはツーペア以上の役が出た時に「勝利」判定が出てダブルアップに挑戦できるようになる―――そしてスリーカードの強さはツーペアと等しいから、俺のダブルアップへの挑戦は既に確定したことになる。ア~~~嬉しいねェ……俺は喜びつつ、二つの札を捨てる操作を行った。
【PORKER】
【♦J XX ♣J XX ♥J】
【捨て札を処理します】
さあ来いよ……???俺の願いに応えるように、ウィンドウに表示されたゲーム画面に少々フラッシュの演出が入った―――こ、これは……!!!!!
【PORKER】
【♦J ♥6 ♣J ♠6 ♥J】
【
【WIN!!】
【ダブルアップに挑戦しますか?】
待てやコラァ!!!!!俺はキレた。いやそれフルハウスですよね????って言う、ワンペアとスリーカードが同時に出てるし明らかにフルハウスですよね!!!!!何が【TWO PAIR】だよボケが!!!!!お前ツーペアの初期倍率が×1なのに対してフルハウスのそれはいくつか知ってるの??????×12だぞ12ィ!!!!!!12倍!!!!掛け算でダメなら足し算で言ってやる!!!!!俺は1000
【W UP】
【場のカード:3】
【選択してください】
【High|Low】
ハイハイハイハイ"来た"わナァ~~~~もうコレ。やっぱ俺は"持ってる"からこういうのを"引き寄せる"Powerがアるっていゥカァ?????まぁアレだよね、何つーか……オレ"勝者"だからさもーマジでェ~~~。俺は調子に乗りつつ「High」をタップした。
【W UP】
【場のカード:3】
【出現カード:2】
【LOSE...】
【再挑戦しますか?】
オイオイオイオイ"やって"るわコレェ。いやアノなんつーか、"分かる"んだよねェ~~~オレにはやっぱさァ。"持ってる"からァ?"持ってる"からサァ、もう"乱数"が"操作"されちゃってンの直感で分かっちゃうんだもん。もーマジでクソ。死ね。
俺が悪態をついている、その時である。
ウィンドウ上に、一つの
【ゲームがクリアされました 初回クリア者:うっちー さん】
……この世界の終わりの告知だった。
そうかァ……このゲームがデスゲーム化したときの告知では「ストーリー第10部をクリアしたら解放」とか書いてあったもんなァ……あのクソみたいな鬼畜難易度から考えるに結構時間が掛かるだろうと踏んでいたが―――どうやら、俺は課金兵の底力ってモンを見くびっていたらしい。無機質な白い箱が光に包まれていく。そして天井には貼り付くように「GAME CLEAR!!」の謎の文字―――この文字はいつも、ゲーム側がクリアウィンドウを表示したとしてもそれとは別枠で
ウィンドウ一杯にデカデカと表示された、寒色系の「LOSE」の文字が、何かを伝えたがっているかのようだった。
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