18話
検証をすることにした。
よく後先考えず突っ込んでしまうことがあるが、俺はどちらかと言えば
―――ドカン。
とまぁそういうわけで俺は慎重型プレイヤーだから、当然のことながら観覧車に乗り込む前に全ゴンドラにNPCを押し込むし、爆発に法則性が無いか研究する。そして慎重型のプレイヤーはゴミ共の中にも結構な数いるので……
「爆発!!!27番ゴンドラ!!!」
「了解、第3観測実験総計
「26番と28番を巻き込んだ、3つのゴンドラはすべて消失」
「了解」
……こういう風に共同作業での検証が可能だ。現在、60あるゴンドラに片っ端からNPCを突っ込んでドカンドカンやっている。どうもこのバーチャル遊園地の遊具は、爆発により破壊されても3分(計測ゴミによると正確には2分59.72秒)ほどで再生してしまうらしい―――ゴミ共の殴る・蹴る等の暴行を受けても同じだ。
その関係でNPCもゴンドラも無尽蔵に生えてくるので、もう詰め放題で爆破し放題だ。チープな爆音が絶え間なく――というのは誇張表現だが――鳴り響き、記録ゴミの持つペンが忙しげに紙上を運動する。ちなみに俺は観測役である……あっまた爆発した。
「爆発、18番ゴンドラ!!!」
報告する。
「了解、第3観測実験総計
手早くメモを取った記録ゴミが聞き返す。えーっとどれどれ……???
「19番を巻き込んだ」
「19番だと?17番は巻き込まれていないのか」
さっきまで機械的に業務を遂行していた記録ゴミが、少々驚いた様子で聞いてくる―――確かに
「ああ、どうもそうらしい」
答えつつ考える―――何が
すなわち、今までの爆発例では
―――しかし、そこで聞こえた何度目かもわからない爆音によって現実に引き戻され……前方の
◆
「3回に渡る観測実験の結果」
その辺に設置されていた安っぽいベンチに腰掛け、まとめ役のゴミが言う。
「大体の全体的な
言葉を紡いだまとめ役のゴミに対し、ベンチに座っているゴミと地べたに座っているゴミと地べたに座っている俺がザワつく。まぁ大方、さっきの
「具体的に言うと……第3回の3周目、18番ゴンドラの爆発時だ」
どうも
「……18番が爆発したとき、一つ後ろの19番は
ゴミ共がザワつく。俺はその隙を見てベンチに座ろうとする……俺文明人ーーーッ!!!!!草食動物と違うーーーッ!!!!ベンチに座らせろベンチにーーーッ!!!!!しかし失敗し、先客のゴミは無慈悲にも俺をその辺の草むらに放り捨てた……クソがーーーッ!!!!!俺はザワつきつつキレた。
「そういうわけでこの会議では、この事例の
n+
「とりあえずあのォ、『方針』的な話なんだけども、個人的に3回目3周目という
ゴミ共が同時多発的に首肯する。その首肯は、ベンチゴミと地べたゴミという格差をものともしないほどに、皆の心が一つになっていることを感じさせるそれだった。そんな首肯群を確認し、指されたゴミが続ける。
「ンで差し当たってはだ、
全くだぜ。俺とゴミ共は同意した。まとめゴミも賛成のようで、早速手元のメモ帳を捲り……しばらくすると視線を上げ、話し始めた。
「17番が出てくる箇所をすべてチェックした―――まず一つ、第1回2周目に
ふむ……俺は考えた。とりあえずそもそも
「二つ、第2回1周目序盤にNPCが『死にたくない、嫌だァ!!!!』と扉の内部からガンガンやっている」
ふむ……俺は考えた。このゲームのNPCはVRツクール故思考ロジックまでチープなため、こういう発言をした僅か十秒後には「わあ、綺麗な青空!!!」とかやってたりする。ままならないものだぜ……まとめゴミが続ける。
「三つ、第2回1周目の最終盤、あとちょっとで1周を終えるってところで16番ゴンドラの
ふむ……俺は考えた。第2回の時点では巻き込まれで普通に消えてるのか……となると『巻き込まれのみに耐性がある』みたいなトンチンカンな性質を持っているわけでもなさそうだ。
「四つ、第2回3周目……ゴンドラを壊したらどうなるのか検証チームに殴る蹴るの暴行を受けて破壊され、3分後には再生している」
ふむ……俺は考えた。
「言っておくが、第3回3周目の28番ゴンドラの事例から言って一度破壊されたゴンドラに耐性が付いたりはしないからな」
まとめゴミが言った……もう想定されてたのかよ。俺はなんか恥ずかしくなったので穴を掘り始めたが、何せこのゲームは全体的にチープなのでなかなか掘れない……ふと辺りを見回すと、俺以外のゴミ共も皆穴を掘っていた……どうも俺たちの目的は等しいようだ、今こそ協力するべきじゃないか?俺は彼らに語り掛け、彼らはそれを了承した……こうして、数十人のプレイヤーが一つの穴掘りに勤しみ始めた。ザック、ザック、ザック、ザック……ああ、働くってこんなにも素晴らしい!!!
それを放置し、まとめゴミが続ける。
「五つ、第3回3周目……1周を終えたところでゴンドラでNPCを殴ったらどうなるのか検証チームの餌食にされ、車体を
いや
「はーい」
「そこのゴミ」
「ああ……たぶんその色替えが原因な気がするんだよな、いやだって見ろよあの観覧車を……アッまた爆発した……今の17番の色は明らかに
「そりゃあ血紅色が
まとめゴミが聞く……そう、それだよ……!!!!俺は食い気味に言う。
「
さっきまでDigDigに興じていたうち数人のゴミ共が我に返り、ハッとしたような顔で俺を見る―――どうも
「つまるところ、
「……なるほど」
まとめゴミが納得したような表情で言う。どうよ……俺はさっきと同じように得意げにドヤ顔をしたが、向けられる殺意がさっきと比べても小さい。どうやら関心を隠し切れないようだな―――俺は優越感に浸ったが、よく見ると穴を掘るゴミ共がこちらに注意を向けていない分殺意が小さくなっているだけだった。畜生ッ!!!!俺はキレつつ、冷静に話す。
「そういうわけで、だ―――こいつを利用して、ちょっと実験してみようじゃないか」
◆
実験が行われた。
手順はこうだ―――120人のNPCを用意、内60人で
更なる実験の結果、
①:ゴンドラをあらかじめ攻撃しておきます
②:ゴンドラに乗ります
③:3分待ちます
④:壁を殴る、地団駄を踏む、同伴させておいたNPCで
⑤:降りられるなら降ります
⑥:③~⑤繰り返し
というような手順を踏むことにより、安心安全に観覧車を楽しむことが可能になった!!!ウーン人類の進歩ってこんな風に行われるんだなァ……俺がベンチに座りしみじみしていると、GMのゴミがやってきて
「イヤあの、そういうゲームじゃないんだけどこれ」
とか言ってきた。オイオイ何を言うんだよ……お前もゴミならば、これくらいの検証は普通にやるはずだろ?俺が言い返すとGMのゴミは、
「確かにそうなんだが……まぁゴミ共がデスゲーム的攻略法でゲームをプレイしてるってことは、逆説的にログアウト可能でも
だろォ?隣に腰掛けてきたGMのゴミに、俺は言う。今、GMとプレイヤーという垣根すら超え、俺たちは同じ景色を見ているのである―――
ゴンドラが絶えず揺さぶられる観覧車、
線路があった場所にNPCの死体が敷き詰められているジェットコースター、
屋根の上に積み上げられた
取っ手だけが一切取り外されたコーヒーカップ―――
もう今日だけでも結構長時間プレイしているはずだが、俺たちが解放できたのは結局この4つの遊具だけだ。この仮想遊園地にはアトラクションがまだまだたくさんある―――少なくとも、シーズンパス分は楽しんでみせるさ。俺がGMのゴミに笑いかけると、GMのゴミも笑顔を返した。
大穴に、光が差し込んでいた。
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