11話

バトルロワイヤル型デスゲーム。


単に『バトルロワイヤル』とも呼ばれるそれはゴミ共の間では大変評判が悪く、「ただ開催する」というだけのことがデスゲームGM地雷行動ランキング10位にランクインするレベルだ―――何故か?決まっている、犠牲を強いるゲーム・・・・・・・・・だからだ―――そして、ゴミ共は他者を犠牲にするのが嫌いだからだ。


そもそもの話、デスゲームのジャンルには大きく分けて二つのタイプがあると言える。閉じ込めだの長期だの階層だのはあくまでも副次的セカンダリなそれに過ぎない―――ではその二つの型とは何か?ずばり、『協力理論上一人も死なない』と『競争犠牲を強いる』だ。そもそも『競争』タイプのデスゲームは過去の創作物において主流だったのだが、MMORPGという舞台にデスゲームを落とし込むにあたって長期運用に向かないことから切り捨てられ、現在は『協力』が主流になっている―――しかし切り捨てはあくまでも長期運用に向かない・・・・・・・・・ことが原因だから、逆に言えばこのゲームのような超短期型・・・・のデスゲームでは問題なく採用できることになる……思えば初手で広場に召喚されたのは、そもそもマップが広場以外存在しない・・・・・・・・・からだったのだろう、ワンマップ型……たまに存在するバトルロワイヤル型カテゴリの一つ、安い開発コストでプレイヤーを阿鼻叫喚させられる、クソみたいなカテゴリだ。



ニュービーが怯え出した。


とりあえずざっと見てやるしかない・・・・・・みたいな感情を持ってそうな奴を探す―――あいつとあいつとあいつ。一応抑えといたほうがいいかと思ったら俺より近くにいたゴミがもう動いていた、流石だぜ……俺はゴミを称賛したがゴミにキモがられたので自分もキモがった。キモッ!!!GMが続ける。


「この広場にいるプレイヤー96人の内、48人に帰還の権利が与えられます―――あなた方のおめでたい頭でも理解できるようによりわかりやすく言わせてもらえば、一人殺したら帰れる・・・・・・・・・―――そういうことです、さあ殺し合うのです、この広場の中で!!!!!!!」


GMが嬉しそうな感じで曇天の元に腕を広げた。ウーンありきたりなポーズ……もうちょっと捻らない?エンカ率体感3割くらいあるぞそのポーズ。っつーかルール設定が適当過ぎるんだよな、シンプルイズベストって言うけど流石に条件文一個じゃ回らないでしょ……俺と共に呆れていたゴミ共から一人が歩き出て、聞いた。


「質問いいすか?」


GMは応答した。


「あ、どうぞ」


「あのー、まずそれ自殺したら・・・・・どうなるんですか?」


「えーと、そりゃ死ぬんじゃないですかね」


適当に返すGMに、ゴミが言い返した。


「本当にそうですか?殺したら帰れる・・・・・・・って話では?どうして自分を殺しても帰れないんです?」


「いや帰る前に死ぬでしょ」


「わかりました、そこまで言うなら実演してみてください」


GMとゴミが話している間に、ゴミ共と俺はじゃんけんをする。じゃんけんぽーん……あ、負けたわクソ~~~~俺が監督かよ。俺いっつもパーであいこなったあとにグー出して負けてる気がするんだけど。


「え?」


「いやだから実演してくださいよ、この場で自殺して」


「この場で自殺してじゃないんだよなァ~~~~~~」


「いやこの場で自殺してでしょ、そこを履き違えちゃいけないと思うワケね」


疲れからか会話が適当になってきた。じゃんけんの結果監督に任命された俺がサインを送る―――交代チェンジだ。サインを見たゴミ共が規律の取れた動きで入れ替わる。


「いや何?その動きは」


GMが聞いた。


「お気になさらず、次は僕の質問です」


交代した番号2のゴミが答えた。


「いやあのォ、質問あとどれくらいあるの?早く終わらせたいんですが」


「未知数ですね」


「未知数かァ~~~~~」


「それで質問なんですが」


「はい」


「なんで自殺を実演してくれないんですか?」


「いや実演する必要ないでしょ」


「いやありますよ、あなたは開発者なんだから自分の発言には責任を持ってほしいな」


「自分で試してくださいよ、それで間違ってたら謝罪しますって」


「やだ」


「なんで?」


「だって自殺してもし死んじゃったら終わりじゃないですか」


「いやそれは私も同じなんですよね」


「同じじゃないでしょ、あなたはGMなんだから死んでも死なない・・・・・・・・ようにもできるはずだ」


「うっ」


「本当はめんどくさいだけなのでは」


「むむむ……」


「ほら早く自殺してくださいよ」


「えーい分かりましたよ!!!それで皆さんが納得するならば!!!!」


GMは何やらコンソールを弄ると四つん這いになり、空に浮かぶどす黒い雲から影を受ける広場の敷石タイル頭を打ち付け自殺し始めた。ガンッ、起き上がる。ガンッ、起き上がる。ガンッ、起き上がる。延々と同じ動作をするGMと静止して見守る周囲のせいで、なんだか同じ動画をループ再生しているような不思議な感覚を覚える―――ガンッ、起き上がる。ガンッ、起き上がる。素直にコマンドかなんかから自殺すればいいのに何でこんな自殺手法を取るんだろう―――俺はふと思った。コマンド自殺だと視覚的にわかりづらい、みたいな感じかな。にしても強い武器とかを出して切腹した方が―――いや、まさかこのゲームには武器が実装されてない・・・・・・・・・・のか……???この広場に特にアイテムスポットみたいなのが見つからないからなんかおかしくね?とは思っていたが、まさか武器が無いとは……


ガン起きガン起きと地道に自殺するGMにゴミが聞く。


「あーついでに聞いておきたいんですけど、例えば一人の人間を二人で同時に殺した場合どうなります?両方ログアウトできるのか、それとも片方だけか」


「ああその場合は両方がログアウトできますね、どっちかに絞ろうかとも思ったんですが、やっぱりデスゲームは平等じゃなくちゃいけませんし」


こいつ……俺とゴミ共のGMへの好感度が上がった。デスゲームは平等じゃなくちゃいけない―――そうだよ、その通りだ!!!よくわかってるじゃねーか……バトルロワイヤル型なんてジャンルのGMでさえなければ、俺たちは友達になれたかもしれないな。俺は一方的に友達になれたかもしれない宣言をした。質問ゴミが言う。


「ところでその、自殺……大変そうですね、お手伝いしましょうか?」


「いいんですか?」


「いいんです」


「じゃあ、お願いします」


質問ゴミがしてやったりみたいな顔をしつつ監督である俺に視線でサインを求めてくる―――俺は「包囲」のサインを出した。96人のプレイヤーたちがGMの周りに集まる……いや、元から集まってはいた。ただ96人が作り出す円は、さっきまでのそれと比べてよりに近かった―――ああ、きれいな円―――心と心がつながっている、何よりの証拠だ。俺は感動的な気持ちになりながら、96人の中心にいる一人の男GMを指し、監督として一つのサイン……「同時攻撃」を出した。


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