姉の正体

 姉が来ると部屋が涼しくなる。

 夏は大変助かるのだが、冬の寒い日は厳しい。

 しかも、部屋の寒さの原因は姉なのに、は寒がりなのだ。

 コタツに入って、姉は熱々のコーンスープを飲みだした。


「なんでコーンスープなんか飲めるんだよ。だいたいそのマグカップ、よく持てるな」

「持てるわよ。幽霊じゃあるまいし」

「いや、そういう意味じゃなくって」


 姉は、「ふぅー、ふぅー」と冷ますこともなく、ごくごくとコーンスープを美味そうに飲んだ。


「美味しい。でもこれちょっとぬるいわね」

「熱湯を注いだのにな……」


 姉は一気に飲み干したマグカップをテーブルに置いた。

 マグカップがつつっとテーブルを滑るさまを俺は目で追いかける。


「雪女も大変だな、姉ちゃん」

「はぁ〜、さむさむ」


 姉ちゃんの使ったマグカップは、今日もいつものようにガチガチに凍ってしまっていた。





         おしまい






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