僕の秘密

 秋晴れの土曜日。

 遊園地の一角にあるショップに僕は一人で来ていた。

 ここは野球場や遊園地のある東○ドー厶シティだ。


 高校生の僕には秘密がある。

 今日は一人でイベントにやって来ていた。

 東○ドームシティでやるイベントといったら、知る人ぞ知る、戦隊ヒーローのショーだ。


 僕の秘密――

 それは、戦隊ヒーローファンだってこと!


 誰にも打ち明けていない秘密。

 あっ、訂正。

 家族は黙認している。


 僕の部屋に並ぶフィギュアや変身グッズの数々。

 今日は新しい戦隊ヒーローのお披露目会だ。


 わくわくドキドキ。

 僕のバイト代のほとんどがヒーローグッズやヒーローショーの代金になる。


 家族以外には誰にも知られちゃいけない僕の秘密。

 特に意地悪な哀川海荷あいかわうみかには、知られたくない。


 あいつ、僕にばっかり意地悪してくるんだよな。


 僕はショーの始まる時間前にショップを覗いていた。

 新ヒーローの5色戦隊ファイブガンマンのフィギュアを手に取った時だった。


「うぎゃぁ、哀川あいかわっ!?」

「ぎゃあっ、江藤えとう!」


 最悪だ、最悪だよ。

 隣でフィギュアを触ってんの、同じクラスの哀川じゃん。


 ――んっ? 待てよ。


「私が戦隊ヒーローが好きなこと、黙ってなさいよね」

 僕の胸ぐらを掴んだ哀川海荷あいかわうみかの顔は真っ赤っかだった。

「哀川も、もしかして戦隊ヒーローが好きなんだ?」

「だ・ま・れ! 黙りなさい」


 僕は心のなかでニヤリと微笑んでいた。

 意地悪な哀川の弱みを握って、天にも昇る気持ちだった。



 だが、この時の僕は知らなかった。


『フッフッフ。私、江藤も戦隊ヒーロー好きだと勘づいていたのよっ。さぁ、私と付き合うのです。江藤!』


 まさかこの哀川海荷と仲良くなって、しか〜も、告白されて付き合うことになるなんて。


 哀川はただのツンデレだった。


 ……僕のことが好きだったなんて。






 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る