第85話 新型戦車

 サバル国のやつらまた攻めて来た。

 だが、こんどはセンシャ1台でだ。

 風の精霊の話では大砲を備えているらしい。

 ついにここまできたかという感想だ。


 だが、足回りは相変わらず車輪だし、動力は馬だ。

 重量が増した為か足取りは遅い。


「目標、新型センシャ。精霊砲、撃てー」

「アースコントロール」

「ボム」

「ウインドコントロールや。よっしゃ、当たったで」


 あれ、風の精霊から新型センシャが無事だと知らせがあった。

 くそう、精霊砲の対策もしてきたか。


 これはいよいよ地雷を作らないと駄目か。

 やりたくないなぁ。

 俺は開発したばかりの大口径ライフルを借りて空を飛んだ。

 新型センシャを上空から観察する。

 大砲の向きは変えられないようだ。

 戦車というより自走砲だな。


 大口径ライフルをすぐ真上から撃つ。

 弾は装甲に当たり跳ね返った。


 駄目か。

 精霊砲で無傷だものな。


 ならば。


「ファイヤーアロー」


 どうだ、蒸し焼きになったか。

 炎は装甲に吸い込まれた。

 俺は死角から装甲に触ってみた。

 熱くない。


 なんでできているんだ。

 どんな攻撃なら通るんだ。

 懇願力なら或いは。

 だが、懇願力を攻撃には使いたくないな。

 感謝の気持ちの祈りを殺すための武器には使いたくない。


 後少しで、ピピデの陣地だ。

 物理も駄目。

 魔法も駄目。

 大砲の隙間からなら、魔法が通るかも。

 うん? あれっ? 隙間?

 毒ガスとかなら通るか。

 でも毒は後始末が厄介だ。


 じゃ、窒息攻撃しよう。


「ウインドコントロール」


 風の力で真空を作り新型センシャを包む。

 新型センシャは歩みを止めた。

 現代の戦車なら真空はまだしも毒ガス対策はしてあるだろう。

 これはまだ未発展の兵器だな。

 だが、その装甲の強度は現代の戦車に引けを取らないとみた。


 新型センシャをやっつけてから何日か経って新型センシャの装甲が作戦本部に送られてきた。


「これはどういう金属でできているんだ」


 俺はランドルフに尋ねた。


「たぶんだが、吸硬メタルだな。この金属はあらゆる物を吸収して硬さに変える」

「反則だな」


「加工には大量の魔力が要るはずだ。たしかサバルの秘匿技術だったと思う」

「やばい、魔力デンチを使われたかも」

「おそらくな」


「輸出を止めようか」

「いや、今の倒し方が出来るうちは止めないで良いだろう。それより大砲を見たか。あれは良いな」

「開発には協力しないぞ」


「ヒントを寄越せ」

「ヒントと言っても銃の応用で出来るだろう」

「だがそれでは戦場に運べない。運べたとしても良い的だ」


「うーん、何かあったかな。そうだハクゲキダンと言うのがあってな。砲を斜めにして空中に打ち出すんだ。そうすると落ちてくるという訳だ。砲身がただの筒で良いので軽く作れる。命中度はお笑い種だがな」

「なるほど訓練が必要だな。だが命中度は魔道具の弾で上げられる」

「ウインドコントロールで微調整が出来るか。だが、目標の固定はどうやる」

「一番近い魔力に向かって行くようにするさ」


 ラクーの脇にパイプを幾つもつけて玉を打ち出す映像が頭に浮かんだ。

 騎砲兵と言ったところか。


「騎砲兵を育成するのか」

「騎砲兵か、良いな気に入った。銃をラクーの背中から撃てるようにしないと。ラクーの訓練も必要だな」


「じゃ、防弾ベストも作らないとな」

「エアクッションの魔法陣を戦闘中に起動すると良いだろう」

「おう、魔力デンチさえあれば、何とでもなる。魔力は腐るほどあるからな」


「他にはアイデアはないか」

「衛生兵代わりの回復のお守りは作ったし、通信兵の装備も作った。レーション代わりに乾燥野菜も作った。あと何かあるかな」


 輸送部隊を強化するには。

 うーん、乗り物を作るにはエンジンが必要だ。

 簡単に作れないだろう。

 ふふっ、少し良い事を思いついた。


「橇の接地面にエアクッションを使って、なんちゃってホバーっのはどうだ」

「ホバーは分からないが。言いたい事は分かる空飛ぶ橇だな。ラクーに引かせるのか」

「そうだ、輸送に大活躍しそうだろう」


「商売に使えて、商人が喜びそうだな」

「平和的に使ってくれるなら願ったり叶ったりだ」


 発明と戦争は切っても切れないな。

 必要があると技術の開発も早い。

 兵器の技術が平和利用だけに向かうと良いな。

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