第69話 輸出品
「サバル国に何か輸出しようと思うのだが、どうしたら良いと思う」
ランドルフがそう言ってきた。
「野菜を輸出したら良いんじゃないか」
「ヒースレイ国に輸出するので手一杯だ。とても賄いきれない」
「じゃ、輸出しないという選択肢はどう」
「それは悪手だな。サバル国からは工業製品が入ってくる。ピピデの民の生活が良くなったので、サパル国の製品を求める奴が多くてな」
「貿易不均衡か。頭痛い問題だよな」
「ヒースレイ国からも苦情が上がっている。何か買ってくれと」
俺が悪いのか。
色々と製品を開発したからな。
ヒースレイ国の特産品をどうするかだな。
「だいぶ、ヒースレイ国の負の魔力も浄化されただろう。じゃ、野菜を作ればいいんだ」
「ピピデに野菜を買えっていうのか」
「おう、ピピデは畜産をやれよ。肉製品を輸出すれば良い」
「急に転換は無理だな」
「ゆっくりとやれよ。飢えなければ、時間的には平気だろう」
「話は戻るが、サバル国はどうする」
「肉と野菜の輸出は現状では無理だな。じゃ、応急処置として工業製品を輸出しよう」
「ピピデの民にそんな物は作れないぞ」
「懇願力が余っているので俺が出せる。そうだな、手始めにボルトとナットを輸出しよう」
「それはどういう道具だ」
「物凄く簡単な道具だよ」
俺はスキルのホームセンター通販でボルトとナットを出した。
「これがそうか。なるほど回すと二つの物を固定できるのだな。だが、釘があるからあまり流行らないと思うぞ」
「まあ、ものは試しだよ」
茂印のステンレス製のボルトとナットは爆発的に売れた。
ランドルフは納得がいかないようだ。
ボルトとナットは日本でも大活躍してたから上手くいくと思っていた。
ついでにステンレスの釘とステンレスのネジとアルミのリベットも輸出した。
これも流行るだろう。
どんなもんよ。
Side:サバル国の職人
俺はサバルで調理器具を作っている。
簡単に言うと鍋やフライパンなどを作っている。
ピピデの民から最近よく注文が入る。
商売繁盛で良い事だ。
「参ったよ」
隣の釘を作っている職人が愚痴をこぼしに来た。
めんどくさいなと思いながら話を聞くことにした。
「何だよ。仕事で失敗したのか。まさか女房に逃げられたとか言うんじゃないだろうな」
「違うんだ。聞いてくれ。ボルトとナットという物がピピデから入って来て仕事が減ったんだよ」
「ほう、新製品か。じゃ、お前のところもそれを作れば良い」
「挑戦してみたよ。だけど、駄目だったんだ。俺の腕じゃ作れない」
「なるほど。どんな物なんだ。そのボルトとナットというのは」
「ほらよ」
出された物を分析してみた。
なるほど、螺旋状におうとつがあるのだな。
ナットの方も同じだ。
それで噛み合うって訳だ。
これは歪みが出ると役に立たない製品だな。
作れないというのも分かる。
「諦めろ」
「冷たいな。細工の精度はまだ許せる。しかし、こいつは錆びないんだぜ。俺はこの金属が釘になったらと思うと夜も眠れない」
「ほう、そうなったら、鞍替えだな。いっその事、リベットを作るか。なら、うちで買ってやる」
「ああ、その時は頼む」
後日。
「恐れていた事が現実になった。錆びない釘が出て来たんだよ。おまけにリベットもだ」
「ほう、リベットには興味があるな」
リベットは鈍い白銀の金属で出来ていた。
出されたリベットをさっそく使ってみる。
こいつは良い。
柔らかいので使い易い。
銅のリベットとどっちが良いかな。
「このリベットな。錆びないんだぜ」
「ご愁傷様だな。俺にはどうにも出来ない」
「俺はよ。決めたぜ。ピピデの民から略奪する部隊に加わる。貴族が募集してたんだ」
「おいおい、物騒だな。考え直せよ。悪い事は言わん」
「ピピデの民は俺から仕事を奪いやがったんだ。許せねぇ。奪い返してやる」
こいつみたいな奴が沢山出るんだろうな。
ピピデの民も罪作りだな。
サバルの軍事力は凄いから、痛い目をみるだろう。
輸出を止めて技術を売ってほしいもんだ。
そうすりゃ丸く収まる。
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