第68話 青首を届ける

 デュラ国の通信魔道具についている着信の魔石が光る。


「もしもし、リョクテです」

「マーティンである」


 今日の用は何かな。

 早く会いに来てくれという催促かな。

 そうだ。

 音速を超えてデュラ国の宮殿に野菜を届けよう。

 30分もあれば十分かな。


「ちょっと30分ほど待ってもらえます」


 よし、風の精霊よ、道案内を頼むぞ。

 なに、音速では飛べない。

 懐に入って方向を示してくれれば良いよ。


 よし、出発だ。

 ぐんぐん加速し遂に音速を超えた。

 空気の幕でカプセルを作っているので、風圧が苦しい事もない。

 Gが心配だったが、どうやら精霊は血の流れが人間と違うらしい。

 ロケット並みのGも大丈夫だ。


 宮殿に大根を撃ち込む。

 もちろん空気の幕で保護してだ。

 懇願力の衝撃吸収を大根に掛けたから無事届いただろう。


 Uターンして家に帰る。


「もしもし、今、約束してたお土産の青首を届けた」

「なるほど確かに青首だ。なかなか剛毅な思考が気に入った」


「おっと、長話しすぎた。そろそろ25人いる子の面倒をみる時間だ」

「ほう、25人もいるのか。多くないか」

「そうだけど、やんちゃな所が可愛くて」


「あまり可愛がりすぎると逃げ出すというぞ。ほどほどにしとけ」

「そうですかね。そう言えば構いすぎるとしばらく嫌われる様な気もします」


「男は背中で教えるものだ」


 威厳を見せろというのだな。

 難しいな。


「会うとつい笑ってしまう。おっと不味い。時間です。ではまたの会話を楽しみにしてます」



Side:デュラ国の国王


 さて、ドラゴンスレイヤーと二度目の会話だ。

 臆していかん、さりとて無謀もいかん。

 慎重にして狡猾にだ。

 出方を窺うのは悪手ではない。

 相手の引き出しを暴くのだ。


「もしもし、リョクテです」

「マーティンである」


「ちょっと30分ほど待ってもらえます」


 国王を待たすのがどういう事か分かっているのか。

 相手を格下扱いする行為だぞ。

 事と次第によっては戦争もやむなしだ。


「大変です。国王様。宮殿の中庭が破壊されました。クレーターの後には野菜と手紙が」


 手紙を読む。

 『お約束の青首を届けました』とある。

 真っ青な配下の者達。

 これが青首か。

 確かに青首だ。

 この事の重要性が分からない者などここにはおらん。

 やってくれる。


 どうやって中庭を破壊したのかは分からないが、宮殿を攻撃出来る手段があるという事だ。

 しかも、野菜と手紙は無事だ。

 破壊した上に兵士を自由に送り込めるという事だ。



「もしもし、今、約束してたお土産の青首を届けた」

「なるほど確かに青首だ。なかなか剛毅な思考が気に入った」


「おっと、長話しすぎた。そろそろ25人いる子の面倒をみる時間だ」


 弟子が25人もいるのか。

 まさか実の子という訳ではないだろう。


「ほう、25人もいるのか。多くないか」

「そうだけど、やんちゃな所が可愛くて」


 むっ、弟子がやんちゃなのか。

 私には弟子はいないが。


「あまり可愛がりすぎると逃げ出すというぞ。ほどほどにしとけ」


 弟子に逃げられた武術家の話は良く聞く。


「そうですかね。そう言えば構いすぎるとしばらく嫌われる様な気もします」


「男は背中で教えるものだ」

「会うとつい笑ってしまう。おっと不味い。時間です。ではまたの会話を楽しみにしてます」


 敵に会うと笑うのか。

 凄いメンタルだな。

 弟子もなかなかやるようだ。


 ふう、こいつの考えは読めん。

 もしや、野菜と同じように、手練れの弟子25人を送り込めるという警告か。

 侮れん奴だ。

 まだ戦争を仕掛ける時期ではないな。

 相手の手札をもっと引き出さねば。


Side end


 ふう、急がないと。

 今回は二人で直接お話は出来なかったが、その方がいいだろう。

 先触れという物を出さないといけないそうだからな。


 マーティンとの会話は参考になる。

 特に男は背中で語るなんてなかなか言えない。

 父親は威厳を持たないといけないのだな。


 国宝を貸してくれたお礼はまだ済んでない気がする。

 次は鷹の爪を持って行って上げよう。

 香辛料の類は貴重らしいから、喜ぶだろう。

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