第59話 浄化の墓標

「パメラ、ちょっと来てみてくれ」


 俺は精霊力を使い話し掛けた。

 これは最近獲得した技で精霊とどこにいても話が出来るというものだ。


「超急いで来た」

「呼び出したのは、これなんだよ」


 俺が手に取ったのは魔法銃と言われる物で、爆発を魔法でやる仕組みだ。

 爆発の量を増やしたら破裂するようになった。


「超好奇心」

「硬くしてもらえないか」

「超了解。ハード」


 銃身を鉄の棒で叩く。

 チンと澄んだ音がした。


「親方、試してみてくれないか」

「よし、野郎ども試験だ。用意しろ」


 まず、銃が組み立てられた。

 そして、的が設置されて、少し離れた所に丸太が建てられ銃が固定される。

 銃からは導線のような物が延ばされた。

 土塁が積み上げられ、安全地帯が作られる。


「3、2、1、発射!」


 親方は導線を握り叫んだ。

 射撃音がして弾は発射された。


「成功だ。やったぞ」


 パメラが発射したばかりの銃を興味深げに触る。


「超胡桃、胡桃を使っている」

「ああ、銃床は胡桃材だな。不味かったか」

「欲しい、超欲しい」

「銃が気に入ったのだな。親方、記念に一つ持っていっていいか」

「構わんぞ」


 パメラが今度注目したのはヤスリ。


「硬い。でも超硬くできる。ハード」

「大精霊様に魔法を掛けてもらって申し訳ない」

「銃のお礼だよ」


 商品の予感。

 銃は輸出できないが、ヤスリはできる。

 硬くして役に立つ物は何だろう。

 剣など武器はやりたくないな。

 よその国に輸出すると戦争に使われそうだもんな。


 ハサミや裁縫道具なんかも硬くすると良いだろう。

 それと調理道具なんかは需要がありそうだ。

 おっと農具を忘れるところだった。

 意外に硬くすると良い物って溢れているな。


 だが、なんか物足りないな。

 時間が経つと魔法が解けるの事も問題だ。

 懇願力で堅くするとパメラの出番はない。

 懇願力で魔法の持続を願うってのも有りだが、なんかピンと来ない。


 自動修復なんて良いんじゃないか。


「懇願力よ、ヤスリに自動修復を与えたまえ」


 これでヤスリに自動修復が掛かったはずだ。


「むっ、魔法が持続されている。超夫婦合作」


 本当だ。

 自動修復には魔法の魔力も含まれるのか。

 これは滅多な物には使えないな。


「親方、日曜雑貨を作っている職人達から道具を買い取ってきてくれ」

「ああ、いいぜ」


 親方が、大工道具、調理道具、裁縫道具、農具を持ってきた。

 パメラと俺で自動修復と硬化魔法が掛かった品を作り上げた。

 よし、商人に売りにいくぞ。


「どうかな」

「困った商品ですな」

「えっ、不味いのか」

「道具は壊れるから、需要が生まれるというものです」

「あー、物の不老不死を作り上げたのか。それは問題だな。だが、いつしか力は切れる。完全という訳じゃない」


「それは何時なので」

「今みてみるよ。ありゃ、力の減り具合からすると千年単位だな」

「では人間にとっては永遠ですな」

「分かった。この商品は売らない」

「それは困ります」

「えー、言ってる事が無茶苦茶だ」

「なに、売り方に気をつければ良いのです。数を絞って物凄い高い値段をつければいいのです」

「うわ、ぼったくりだ」


「心外ですな。物には相応しい値段というものがあります。それに倣っているだけですな」

「確かに数を絞れば、他の職人が作った物も売れるだろう」

「でしょ、一点金貨1千枚ぐらいで、一年に数点ぐらい流すのが適当ですな」


 うーん、懇願力を大量に民間に還元させるという目的が達せられないな。


「数千年、壊れない物で職人が困らない物ってあるか」

「そうですな。墓標なんてどうでしょう」


 そうだな、墓標なら数千年壊れなくても困らない。

 死人の数だけ必要だからだ。

 それに石なら数千年は何もしなくても持つ。

 やる意味がないかもしれないが良いだろう。


「分かったが、石の墓標は重たいぞ。運ぶのが大変何じゃないか」

「何をおっしゃいます。数千年壊れないのなら、木で作るべきですな。そちらの方が高級感が出ます」


 そうか、この世界は木が貴重なんだった。


「サイズはどれくらいだ」

「腕の長さの半分ぐらいですな」

「小さいな」

「ですが、それが手前どもと取引のある国の習慣でして」


 郷に入っては郷に従えだな。

 スキルのホームセンターの木材で墓標が作り上げられて、せっせと俺とパメラは魔法と懇願力を掛けた。


 墓標は好評だった。

 地球産の木材に魔法を掛けると硬化魔法が持続される。

 それに懇願力の自動修復を掛けると持続効果が重なって、清浄な魔力が染み出すらしい。

 数千年は清浄な魔力が出るみたいだ。


 墓地を清められると別の意味でも評判になった。

 俺達が作った墓標を使うと天国に行けるみたいな評判が立っているらしい。

 まあ、不浄な者を生み出さない事だけは確かだ。

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