第46話 給料力
俺は無限の魔力と精霊力とで、進撃を開始しなかった。
農家だからな。
畑をやるのが俺の仕事。
切った張ったは柄じゃない。
「やー、子供は可愛いな」
「あー」
「きゃっきゃっ」
「まーま」
「言葉を喋ったぞ。生憎と俺はママじゃないけどな」
ビニールハウスを改造した子供部屋で心の充電作業。
「可愛いだけじゃないですの」
「苦労を掛けるな。あまり育児に手を掛けられなくてごめんよ」
「育児をするのは母親と親族の仕事なの」
ピピデの民を見ていると良く分かる。
子供は一族で面倒を見ている。
大家族だからこういう形態になるのだろう。
老人がいないので、限りはあるが。
「あなたは神器を神様に奉納するのが仕事なの」
「それな、方策が立たない。いや待てよ。俺の仕事は農夫だ。農夫らしい戦い方をすべきだな」
「何か思いついたの」
「ああ、ヒースレイ国を聖域にするのは前に言ったと思う。そして豊かにする。そうすると隣国は羨ましくなるだろう。きっと攻撃してくるに違いない。そしたら精霊砲の出番だな」
「きっと上手くいくの」
俺はジャガイモの育て方の本を執筆し始めた。
完成したそれをヒースレイ国のキャラバンに持たせた。
「ランドルフ、ヒースレイ国は同盟国だが、大精霊に支配させたい。どうすればいいと思う」
「軍事面はピピデの圧勝だな。銃の存在が大きい。だが、力ずくは愚策だな。荒廃を招く。精神面を攻めるべきだ」
「というと」
「外交だな。大精霊を連れてヒースレイ国を訪問すべきだ」
「大精霊は精霊の樹を離れると力が弱くなると言ってたな。危険はないのか」
「もちろんあるさ。だが、ピピデの諺に魔獣の肉が食べたけりゃ怪我を恐れるなとも言うしな。」
「大精霊達は無理だな。子供達と引き離すなんて真似は俺には出来ない」
そうか、俺一人で行けばいいんだ。
幸い植物を成長させる手段もあるし、俺が精霊だと言って困る事はない。
「決心がついたようだな」
「ああ、俺一人で行く」
「大精霊様を連れて行くのは駄目か。だが、王が行くのは効果があるだろう」
「俺な、精霊になったみたいなんだ」
「なにっ、本当か」
「嘘を言っても仕方ない」
「なんでそんな事に」
「理由は分からない。でも精霊力が俺に宿っているのは確かだ」
「きっと肌を合わせ過ぎたのだな。そんな人間は今までいなかった」
「理由はさておき、それならどうだ」
「十分だ。訪問の際はピピデの戦士を護衛につけよう。それと診察したい」
「ああ、ランドルフは回復魔法の名手だったものな。いいよやれよ」
「では、アナライズ。むっ、何だこれは」
「えっ、病気でも見つかった」
「違う。精霊の力があるのは分かった。でもそれだけじゃない。精霊力と別種の神聖な力がある」
「あれっ何だろう。ヒントはないの」
「精霊力が燃え盛る炎だとすると、この力は煮えたぎるマグマだ」
うーん、何だろ。
俺が持っていて、他の人が持ってないもの。
それでなおかつ消費するもの。
ああ、あるな。
そういうのが。
給料だ。
これは魔力でもないし、精霊力でもない。
名前は後で付けるとして、何が出来るんだろ。
操れば店に関係なく自由に通販できるのかな。
「物を買う魔法とかあるか」
「ないな、近いのは召喚魔法だ。買うのではなくて引き寄せるだけだが」
「教えてくれ」
「魔法はサモンだ」
「やってみるよ。給料を意識して、パソコンよ出てこい。サモン」
現れるパソコンが入った段ボール箱。
「出来た」
給料の力は半端ないな。
異世界の物体を召喚してしまうとは。
「これはどこの商品だ」
「分からん」
「人の物を勝手に持って来たら泥棒だと思うぞ」
「今後はどうしても必要じゃない限り使わない事にするよ」
「だが、おかしい」
盛んに首をひねるランドルフ。
「何か変か」
「召喚するには契約しないと出来ない。例外もあるがな。勇者召喚は例外だ。どういう事だ」
「出来ちゃったものは仕方ないだろう。ステータス・オープン」
――――――――――――――――
名前:シゲル・リョクテ
魔力:19787/19787
スキル:
サケタの種
国家園
名前ジェネレータ
言語理解
絶倫
賢者タイム
レベルアップ
エイヨーN2
エネメス
残金:
205,084円
次の給与まで5日
――――――――――――――――
前に見た時から千円ぐらい減っている。
たげどパソコンが千円とは思えない。
女神の野郎ぼったくってるな。
力を直接使えば効率が遥かに良い。
だが召喚魔法は支払いをしていない可能性が大だ。
女神のシステムはそこいらがキチンとしているに違いない。
ぼったくり疑惑は消えないが。
「後はプリンターよ出てこい。サモン」
これで農業の指南書が量産できる。
電源はホームセンターの能力で買えるからな。
力の名前をなんにしようか。
給料力。
いや、召喚力。
ぱっとしないな。
次元突破力でどうだ。
やっぱり単純に給料力にしよう。
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