第45話 俺は半精霊

 今日は狩りのお誘いが来たので乗ってみた。

 ランドルフと一緒にラクーの背に揺られる。

 銃を担いだピピデの戦士が10人ほど見える。


「飛ばすぞ。ハイヤー」

「ちょっと待って」

「喋っていると舌を噛むぞ」


 狩場は荒野の中の飛び地になっている草原だった。

 元草食魔獣が草原の草を食む。

 この辺りの草食魔獣は動物に戻っているみたいだ。

 姿勢を低くして忍び足で虎型の魔獣が近づいてきた。


「構え。発射」


 銃から弾丸が飛び出し草に当たってそれを舞い散らす。

 いくつか当たったのだろうか。

 虎型の魔獣が怒り狂う。


「あれはなんていう魔獣」

「ライオネスタイガーだな」


 虎なのかライオンなのか、はっきりしてほしい。


「一斉射撃」


 銃が一斉に発射されライオネスタイガーは息絶えた。

 さて解体だ。

 さすがに地球の虎の二倍ほどある体は肉が沢山とれる。

 解体をする間に散歩する事にした。

 茶色いスモックに似た衣服を来た精霊が土いじりをしている。


「面白いか」

「うん」


 何っ、精霊と言葉が通じたぞ。


「何しているのかな」

「土のね。状態を調べてる」

「じゃ、邪魔したら悪いな。お仕事頑張ってくれ」

「嫌、遊ぶ」


「お仕事はいいのか」

「今終わったから」

「そうか、お絵かきでもするか」


 エイヨーN2でスケッチブックと蛍光ペンを買った。


「わーい。お絵かき、お絵かき」


 元草食魔獣をスケッチする精霊。

 カラフルな絵が出来上がった。


「絵を保管する所がないの」


 悲しそうな精霊。


「俺の家で絵を預かってやるよ。暇ができたらいつでも見に来ると良い」

「うん、そうする」


 そんな事をしていたら解体は終わっていた。


「精霊様のご加護を」


 ランドルフが精霊を拝んでいる。


「はい」


 ランドルフは満足して俺にラクーに乗るように言った。

 帰路は魔獣の素材も積んでいるのでゆっくりだ。


「精霊様が何を言って分かったらなぁ」

「えっ、はいって返事してくれたぞ」

「俺にはジャガとしか聞こえなかった」


 ちょっと待って、俺だけが精霊の声が聴けるようになったのか。

 大精霊を妻にした特典だろうか。

 いや、違うな。

 時期が合わない。


 魔力が増えたからか。

 いいや、それも時期が合わない。

 精霊の事は大精霊に聞くのが一番だ。


 帰って早々にエーヴリンのもとに行く。


「エーヴリン、俺って精霊の言葉が分かるようになった」

「きっと、精霊使いになられたの」

「そうなのかな」

「調べてみるの」


「どう」

「大変なの。精霊力があるの」


 て事は半精霊で半人間って事。


「精霊になるとどんなデメリットがあるんだ」

「使命感が芽生えるの。それと神の定めた規則に従わなければいけないの」

「どっちも俺に適用されてるようには思えないな。今している生活では規則に抵触しないだけか。いや使命感なんてものはかけらもない」

「精霊の樹がないと大精霊は死ぬの」

「俺って精霊の樹は持ってないな。こういう場合どうなるんだ。女神様、不具合を発見」


 女神からは返答はない。

 という事は大した問題ではないって事だな。

 俺にとって精霊になるデメリットは今のところないな。

 メリットはどうだ。

 そうだ。

 畑に行って作物に手をかざすと作物が急成長した。


 魔力はどうだ。


「ウォーター。ステータス・オープン」


――――――――――――――――

名前:シゲル・リョクテ

魔力:19787/19787


スキル:

 サケタの種

 国家園

 名前ジェネレータ

 言語理解

 絶倫

 賢者タイム

 レベルアップ

 エイヨーN2

 エネメス

残金:

 206,193円

 次の給与まで5日

――――――――――――――――


 やっぱりだ。

 魔力が減ってない。

 魔力無限って事だな。


「俺ってどういう存在なんだ」

「初めてのケースなの。男の精霊はいないの」

「女神の作為を感じるな。もしかして、俺って不老不死」

「たぶんそうなの」


 どれだけ妖精を増やしたいんだか。

 精霊の規則を聞いた。


 攻撃の意思なきものを攻撃してはならない。

 負の魔力の浄化に勤しむべし。

 神の言葉に絶対服従。


 大体こんな物らしい。

 それに沿った生活をしていると言えばしてるが。


「済まん」


 そう言ってから元草食魔獣に石を投げた。

 普通に攻撃出来るんだが。


 何っ、エサと言わんばかり尻尾を振って近づいてくる元草食魔獣。

 俺は野菜を投げてやった。

 エサを投げたから規則に抵触しないのか、それとも俺には規則は適用されないのか、どっちだ。


「エーヴリン、鹿さんに石を投げてみてくれ」

「できないの」

「エサの時間だよーって思って投げてくれ」

「出来たの」


 おー、攻撃の意思があるかどうかで変わるのだな。

 俺は最初、攻撃の意思を持って投げた。

 やっぱり、規則が適用されてない。

 何だろね。

 女神にどんな思惑があるか知らないが、好都合だ。

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