第43話 買い物に付き合う

 商人が湖の所で野営していると知らせがあった。

 ジョセアラが何か買いたい物があるそうで、俺はそれに付き合って商人のもとに出かける事にした。


「何を買うのか教えてくれよ」

「秘密よ。でも、たわいのない物よ」


 大亀の背に揺られ、商人のもとについた。


「ご苦労様」


 大亀に野菜を投げてやる。

 大亀は野菜を食べると湖に入っていった。


「ティーセットはありませんか」


 なんだジョセアラの買い物はティーセットか。

 鯖缶の空き缶でコーヒーを飲んだっけ。

 ティーセットも欲しくなるよな。


「少し値が張りますが良いのがあります。金貨20枚です」


 金貨がどれぐらいの値打ちなのか分からないが、かなり高いのは分かる。

 俺の持っているお金なんて銀貨数枚だ。


「あなた、払って下さる」

「えっ、俺が払うの」


 そんなお金はないんだが。


「甲斐性のない男ね。まったく役に立たないんだから」


 むっ、そう言われても無い物は無い。

 ええと、確か商人は湖の聖水を汲んで帰るのだったな。

 エーヴリンに出来た事がジョセアラに出来ない訳はない。

 要は商品価値をどうやって見出すかだ。


 そうだ。


「ジョセアラ、魔法で毒を出して売れよ。虫に効く毒をいつも出しているだろう」

「ああ、あれね。そんな事でいいの」


「商人さん、虫に効く毒を買ってくれよ」

「ほう、毒を商売なさるとは。しかし、需要はありますな。どこも野菜不足。虫に食わせる余裕はない」

「でしょ。濃縮すれば、かさばらないしさ」

「そうですな。使う時に何百倍にも薄めるのであれば利便性も増します。よろしい金貨20枚で買わせていただきましょう」


 商人は空の樽を出してきた。


「結局、私が払うのね。プレゼントして欲しかったけど仕方ないわ。ポイズンウォーター。これで良い」

「はい結構です。差し支えなければ、次回も毒を売ってもらえると嬉しいです。毒を入れた樽はもう他の用途には使えませんから」


 木が貴重品なんだよな。

 スキルで木材は買えるが、商売するほどの大量の木材は確保出来ない。

 杉の木を植えて精霊に大きくしてもらえば一攫千金だな。

 大精霊が一人増えるのを許容すればだが。


「分かったわ。毎回売りに来る事を約束する」


 【サケタの種】と【国家園】オン。

 杉の苗を探すがない。

 ちくしょうだめか。

 そうだ、家具だとクルミ材があったな。

 でも家具にするクルミと食べるクルミは種類が違うんじゃなかったっけ。

 インターネットで調べたいが、無理なのはしょうがない。


 まあ、いいだろう。

 食べる柿の木だって板にして床の間の飾りにしたりするからな。

 食べるクルミの木を板にしてもいいだろう。

 お金が欲しい、こんな理由で嫁を増やしていいのだろうか。

 いや良くないが、子供が生まれると一人10万円につられた俺が言うことじゃないな。


 クルミの苗を買って、湖のほとりに植える。


「今、樹の苗を出しましたよね」


 やばい、商人がいるのを忘れていた。

 俺は女神様のお力で植物が出せるとか言ったら、餓狼の群れに餌を投げるようなもんだよな。


「植物限定のアイテムボックスが使える」

「それはまた便利ですな」

「苗は女神様に頂いた物だ」


 なぜか納得して頷いている商人。


 翌日。

 朝一で湖に来た。

 大木になったクルミの樹を商人達は感嘆の目で眺めていた。


「この樹は精霊の樹だから、傷つけたりするなよ」


 そうランドルフが商人に警告していた。

 いよいよ精霊が生まれる。

 2メートルほどの緑の実から光と共に精霊が生まれ出た。


「君の名はパメラだ」

「パメラ超爆誕」


 パメラは薄緑のドレスをまとって豊満な体つきをしていた

 体のカーブがどこか色気を感じさせている。

 言動は変わっているが。


「魔法は何が使えるんだ」

「超硬化魔法だよ」

「硬くするのか。役に立ちそうだ。俺の嫁になるか」


「子孫繁栄を地で行っている男は超好きだ。嫁になる」


 パメラは他の大精霊や、大精霊の誕生に立ち会わせた俺の子供達見て言った。

 子供が好きなのか。

 覚えておこう。


 よし、ここにクルミの森を作ろう。

 俺はクルミの苗を三十本植えた。

 クルミの実は折をみて草原のあちこちに植えるとしよう。

 リスなどの小動物も喜ぶだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る