第41話 笑いが止まらん
Side:女神
ふふふ、笑いが止まらん。
レベルアップの真相を知ったらきっと驚くだろう。
いや、レベルアップは辞めてくれと泣いて懇願するやもしれん。
「ファルティナ様、何が可笑しいのですか」
天使の一人が訝しげに話しかけてきた。
「いやな、もう少しで未来永劫使える奴隷を手に入れられると思うと笑いが止まらん」
「何をお作りになったのですか。あまり規則に背くと創造神様に叱られますよ」
ぎりぎり規則は破ってないはずだ。
天界の為になる事をした人間には褒美を与えてもよいとなっている。
「大丈夫、規則は破っていない。魔力が欲しいというので褒美に与えてやっただけだ」
「人間に無理やり魔力をお与えになったのですか」
「そんな事をしたらせっかく使える駒ができたのに損してしまうであろう」
「では何を」
「人間を少しずつ精霊にしてやっただけだ」
「それは不老不死にしたのと同じ事なのでは」
「言うな。精霊の数は減っている。人間一人を精霊に変えたとて支障はあるまい」
「知りませんからね」
作った精霊は神の駒。
自由に動かす事が出来るように仕掛けがしてある。
これで完全に精霊になれば心置きなく干渉できる。
と言っても制約はあるがな。
精霊は反撃以外の攻撃は出来ないはずだ。
神の規則でそうなっている。
これは自然に産まれた精霊も含まれる。
あの男はその点もうまくやった。
隣国を聖域だと宣言して、精霊の力を及ぶようにしてしまった。
そんな屁理屈で動く精霊も精霊だがな。
案外、男を精霊にした事が影響しているのかも知れん。
半精霊だが、ほかの精霊に影響を及ぼしたのだろう。
予想外だが、嬉しい予想外だ。
「大丈夫のはず。史上初の男の精霊を作ったからと言って罰せられるはずもない」
「聖獣の件はどうなさいます」
「それもあったな」
聖獣が負の魔力に染まって狂ってしまった。
人間を殺し始めたので神器を与えて人間に封印させたが、その封印が解けるのも時間の問題だ。
これもあの男に対処させよう。
「どうするんです」
「あの男を上手く使う。給料を餌にすれば従うだろう」
「上手くいきますかね」
「上手くいかなかったら精霊達に説得させよう」
「ではそのように。神器、戻って良かったですね」
「それも、あるな。私の神力が戻って、給料として神力を払ったとしてもかなりお釣りがでる」
「ファルティナ様がいけないのです。神器を与えたら眠りに就かれたりするからです」
「まさか、神器が汚物と化してしまうとはな。汚くて回収する気も起きんかったわ」
「さっさと回収すればよろしかったのに」
「予定では神器を背景とした長期安定した国家が出来るはずだった」
「そうですね。神器を使うと怨念とも言える負の魔力がこびりつくなんて、確かに想像できなかったです」
「神器は武器だからな。人を殺せば怨念もまとわりつくであろう。そのために清浄な魔力を注入するように言ったのに。人間というのは愚かだな。忠告を忘れてしまうとは」
この星を見守るのも骨が折れる。
他者を害すると魔力が怨念に染まって負の魔力になる。
それで自然と犯罪が少なくなる予定だった。
それがどうした事だ。
人間は争いを辞めない。
大精霊に負の魔力に対する清浄な魔力の生産を任せたのも計算違いだ。
負の魔力に負けて、皆死んでしまって、悪循環に陥ってしまうとはな。
大地の清浄な魔力を生産する機能をもっと強化しておけばよかった。
大地から染み出す清浄な魔力だけでは賄いきれない。
今は大精霊が八人いてなんとかなっているところだ。
「知の神器なるものが出回っていますが、あれは良いのですか」
「問題あるまい。あの男は神の力で出しましたと言っている訳だから、罰せられない。もっとも半精霊では干渉はできないから、どうしようもないがな」
「ほっといて、大変な事になっても知りませんから」
「こんな所で喋ってないで、あの男のスキルの為に働くのだ」
「そんな事言って、創造神様に告げ口しますよ」
「悪かった」
「通販スキルって精神魔法と召喚魔法の合わせ技ですけど良いのですか。しかも行使は天使が行っています」
あの男に支払った給料という名の神力は天使が魔法を行使するのに使っている。
「しょうがないだろう。異世界の物を作り出すなんて召喚でもしないと。精神魔法で辻褄合わせもばっちりだ」
「勘のいい人が気がつきそうなものです」
「大丈夫だ。お金は落ちている物を使って払っておいた。帳簿もぴったり合っているはずだ」
しばらく寝ていないのに気がついた。
給料の支払いを自動に設定して、しばらく眠りにつくとするか。
神器の回収も自動にしておこう。
何か忘れている気がする。
思い出せないのなら、そんなに重要な事ではなかったのだろう。
「異世界とはいえ地上に魔法行使は規則違反……」
今は眠い、小言なら後にしてほしい。
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