第37話 ドラゴン・スレイヤー

 今日も元気に畑仕事だ。


「来るの」

「何が来るんだ」

「負の魔力の塊が来るの」


 また、例の雲が来るのかな。

 聖域の淵に大急ぎで向かう。

 大精霊達は飛んで行くので俺よりも早い。

 俺が到着した時には大変な事になっていた。


 でかい、魔獣の何倍もでかい。

 十階建てのビルぐらいはあるだろうか。

 そんな巨体のドラゴンが大精霊達とピピデの戦士達相手に戦っていた。

 銃魔法が一斉に発砲されるが、ウロコではじき返された。

 大精霊達も攻撃魔法を連発するが、有効打にはならないようだ。


「ステイニーとエリザドラとキャロリアは精霊の樹まで撤退。精霊砲を撃つんだ」

「はいな」

「はい」

「はいです」


 時間稼ぎしないとな。

 魔獣だろうから、野菜を食わせるか。

 清浄な魔力の補給の為にピピデの戦士は野菜を携帯していた。

 俺はそれを借りて、ドラゴンの口に投げ込んだ。

 苦しがるドラゴン。

 効いてはいるが、駄目だな。


「半ば不浄な者になっているの」

「とにかく野菜を食わすんだ」


 ドラゴンの口に野菜を投げ込むピピデの戦士達。

 ドラゴンは苦しがるだけで、一向に引く様子がない。

 そして、砲撃が始まった。


 土の砲弾を食らいのけぞるドラゴン。

 駄目か。


「メガウォーターショットなの」


 プールほどの大きさの水の砲弾がドラゴンを叩く。

 これでも駄目か。

 ドラゴンが吠えて、落馬して乗り手のいなくなったラクーを一飲み。

 やりたい放題だな。

 ドラゴンが大口を開けた。


「メガウォーターシールドなの」


 プールほどの大きさの水の盾とブレスがせめぎ合う。

 エーヴリンがブレスの直撃を食らい吹っ飛ばされた。


「エーヴリーーーン!!」


 くそう。

 このままじゃ。


「メガポイズンミスト」


 ジョセアラの毒の霧も効果は無いようだ。


 ドラゴンが吹っ飛んだエーヴリンを食おうと大口を開ける。

 俺はパニックになって、畑に行く時はいつも携帯しているお茶が入ったペットボトルを投げた。

 ドラゴンの喉奥に消えていくペットボトル。

 やばいエーヴリン食われる。

 突如苦しみだすドラゴン。

 お茶にも清浄な魔力が含まれているんだったな。


 少し様子がおかしい。

 ドラゴンの苦しみは継続して続いている。

 みんな、攻撃を辞めてドラゴンの行動を注視した。


 俺はエーヴリンに手を貸して起こす。


「大丈夫だったか」

「ええ、大丈夫なの。それに大精霊は不老不死なの」

「無茶はするなよ」


 突如倒れるドラゴン。

 倒したのか。


「ドラゴンスレイヤーが誕生した」

「ドラゴンスレイヤーばんざい」


 みんな、俺の方を見ている。

 えっ、俺なの。

 俺がドラゴンスレイヤー。

 まさかな。


「ス、ステータス・オープン」


――――――――――――――――

名前:シゲル・リョクテ

魔力:0/10587


スキル:

 サケタの種

 国家園

 名前ジェネレータ

 言語理解

 絶倫

 賢者タイム

 レベルアップ

 エイヨーN2

 エネメス

残金:

 47,520円

 次の給与まで13日

――――――――――――――――


 うわっ、魔力一万超えだ。

 俺が倒したので間違いないようだ。

 お茶が最後の止めになったのかな。

 いや違うような気がする。


「ファルティナ様。ドラゴン倒しました。褒美を下さい」

「駄目だな。しかし、疑問に答えてやろう。倒したドラゴンにとって緑茶のカフェインは猛毒だったのだ」

「ドラゴンって草を食わなそうだからな」

「このドラゴンの弱点がたまたまカフェインだっただけだ。くれぐれもこれに味をしめてドラゴンに突撃するでないぞ」

「はい」


 ドラコンは瞬く間に解体された。

 肉と血は浄化して薬にウロコや骨や牙や爪は武具にするようだ。

 素材の十分の一はヒースレイ国に売却するらしい。


 ベビーラッシュが始まるぞ。

 戦いの高揚もあり、大精霊全員と致してしまいました。

 そして、新たに八人の子供が産まれた。

 合計17人の子供。

 魔力によればあと98人産まれるはずだ。

 どうすんだよこれ。

 それは後でなるようになるだろう。


 それより、体というか魔力が変なんだよな。

 魔力が体の一部みたいに感じられる。

 自由自在に魔法を操れる気がするんだ。

 レベルアップした副作用。

 たぶんそんな気がした。

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