第29話 ピクニック

 2ヶ月で聖域が更に広がった。

 直径は3キロはあるだろうか。

 湖と聖域は遂に繋がった。

 浄化した魔力溜りにも後少しで繋がりそうだ。


 今日は給料日。


「女神様。魔力溜りも潰しています。褒美を下さい。ホームセンターの利用が良いです。できればガソリンも」

「妖精も順調に増えているし、良いだろう」

「ありがたい」


 さらば尻拭き草、おいでませトイレットペーパー。


「神器の件はどうなった」

「そちらは鋭意努力中です」

「まあよい。励めよ」


「さてと、ステータス・オープン」


――――――――――――――――

名前:シゲル・リョクテ

魔力:0/-88


スキル:

 サケタの種

 国家園

 名前ジェネレータ

 言語理解

 絶倫

 賢者タイム

 レベルアップ

 エイヨーN2

 エネメス

残金:

 331,840円

 次の給与まで30日

――――――――――――――――


 【エイヨーN2】は俺がよく利用してホームセンターだ。

 品揃えは普通だから、期待が持てる。

 【エネメス】はこれまた俺が使っていたガソリンスタンド。

 ガソリンがあると出来る事も広がる。


 給料も貰ったし、これでジャガイモの量産も一層進む。

 大規模に移住が始まってから3000個もの種芋を取り寄せたから、後2000個ほど取り寄せればオッケーだろう。

 ない袖はふれないしな。

 実ったジャガイモを植えて普通に育てる試みも行われている。

 こちらも順調だ。

 三ヶ月ほどで収穫できるはずだ。


 嬉しいお知らせもあった事でもあるし、子供達と湖までピクニックに行こうと思う。

 ピピデ族の乳母車が凄い。

 なんと赤ん坊が六人乗れて、世話をする人が一人乗れる。

 土台は鉄製で、幌の部分は皮だ。

 蛮族の乳母車って雰囲気だが、普通の乳母車も大きさは違えど大差ないそうだ。

 もちろんラクーが牽引する。

 遊牧民ならではというところだろう。


 それを二台借りてピクニックだ。


 湖の周りには草が生い茂り鹿や大亀が草を食んでいた。

 これは草刈りしないといけないな。

 ホームセンターが使えるから草刈り機も運用できる。

 今は仕事の事を忘れよう。


 レジャーシートを敷いてお弁当を広げる。

 のどかでいいな。

 幼児ほどの精霊が姿を現し風と戯れる。

 赤ん坊はそれを目で追ってはしゃいでいた。


「あー、癒されるってこういうのを言うんだな」

「精霊達も楽しそうですの」


 突然、遠くで雷鳴が鳴り響いた。

 見ると東から赤黒い雲が近づいて来る。


「あかん、不浄の雲が近づいてる」

「おい、おい。毒の雨が降るんじゃないだろうな」

「うちに任せて。メガウインドシールド」

「メガホーリーウォーターですの」


 上空で光と闇が激しく争っている。


「樹から遠すぎて全力が出せないですの」


 テラ級の魔法が放てれば一発なのだろう。

 なんか手はないか。

 火魔法は駄目だ。

 土魔法もだ。

 回復と香りと血魔法は言わずもがなだ。


 そうだ掃除機だ。


「竜巻だ。竜巻に吸い込むんだ」

「はいな。メガトルネード」


 風が渦を巻き不浄の雲を吸い込んでいく。

 出口である上部にはエーヴリンの聖水が降り注ぐ。

 不浄の雲は小さくなっていき、仕舞には跡形もなくなった。


 余った聖水がキラキラと舞い落ちる。


「ふう、とんだ通り雨だったな」

「なんで不浄の雲が漂ってきたのか調べる必要がありますわ」

「ヴェネッサ、分かるのか」

「ブラッドジャッジメント。不浄の雲に血が多量に含まれていたから、分かります。激しい戦闘が行われたようですね」

「戦闘はここまで波及すると思うか」

「かなり遠いですから、問題ないでしょう。でも、業腹だわ。他人に迷惑を掛けてそのままと言うのは」

「遠距離攻撃したらどうや」

「おいおい、魔法をぶっ放すのか。人が大勢死んで恨まれそうだ」

「自衛の為の攻撃は教義でも認められてる」

「そうだわ。判決は有罪ね。天国に行ってもらいましょう」

「大精霊に手を出して知らんぷりは許せないですの」


「みんなお怒りだな」

「皆さん、お子様に害が及びそうだったので、怒っているんじゃないでしょうか。かく言う私も激しく怒ってます」


「なんか案をだしてぇな」

「俺は知らんぞ。土魔法で筒を作って蓋をする。蓋は椎の実みたいな形が良い。そして、火魔法を筒の中で爆発させる。そうすると蓋が飛んでいく。ただ当たるかどうか責任持てないぞ」


「うちがウインドコントロールで誘導すればいけるんやない」

「じゃあやります。アースコントロール」


 10メートルはあろうかと思われる化け物砲塔が出来上がった。


「ボム」


 爆発音と衝撃が辺りを走る。

 衝撃と音が思ったより小さいのは魔法を上手くコントロールしているからだと思う。

 撃ち出された砲弾は早すぎて見えない。


「ウインドコントロールや」


 軌道修正もばっちりか。


「着弾地点の確認はどうするんだろう」

「心配いらへん。眷属の下級精霊が情報を教えてくれる」

「さいですか」


 彼女達は相当怒っていたらしい。

 その後、数百発ぐらい撃ってすっきりした顔になった。

 とんだピクニックになったな。

 今後、彼女達は怒らせないようにしよう。

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