第25話 出荷が始まる

 エリザドラとキャロリアが野菜を成長させる。

 2百本もの野菜が一瞬で育つのは見ていて圧巻というよりはない。


「出来た」

「ノルマは終わりました」


「皆の者、精霊様に感謝を」


 ランドルフがそう述べて、ピピデの民の大人が鍬でジャガイモを掘り始めた。

 子供達は唐辛子の収穫だ。


「いたっ」


 子供が手を切ったみたいだ。


「見せてみろ。プチヒール」


 ランドルフがすかさず治療した。


「そういえば治療の魔法の話は聞いたけど、攻撃魔法の話は聞いた事がないな」

「なんだそんな事も知らないのか」


 俺の呟きをランドルフが聞き取ってそう答えた。


「教えてくれよ」

「ああ、いいぜ。属性スキルを持っていると消費魔力が少なくて済む」

「じゃあ、誰でも全属性使えるのか?」

「そうだな。得意不得意はあるがな」


「攻撃魔法はどんな種類があるんだ?」

「まず大きさ。プチ、無印、メガ、ギガ、テラがある」

「それは約何倍の差がある?」

「プチの百倍が無印だ。大きさだと4倍ちょっとぐらいだな。だが威力は小さくは出来る」

「そうだよな。加減が出来ないと」


 体積は三乗だから。

 ええと5の三乗は125。

 4の三乗は64。

 ちょうど中間だから4.5倍ぐらいか。

 計算は苦手だ。



「待てよ……ええとゼロが八個だから、テラの魔法だと十億倍って事か」

「そうだな。テラの魔法は中隊が吹っ飛ぶ」

「魔力消費はどうなっているんだ」


「プチの十倍が無印だ」

「それだとテラ級は1万の魔力が必要なのか」

「そうだな、そうなる」


「エクストラヒール前に使ってたよな。あれは魔力1千が必要だったのだな」

「俺は回復属性があるのだが、全魔力を振り絞らないといけないな」


「次は種類について教えてくれ」

「代表的なのだとアロー、ランス、ハンマー、シールド。こんな所か。順にスピードが遅い」

「ファイヤーアローとかなるのだな。アロー系がもっとも速いと」

「威力はハンマーが強そうだな」

「シールドは動かない分、強度は強い」

「なるほどね。分かったよ」


 恐ろしい事に気づいた。

 精霊に魔法を気安く頼んでいたけど、精霊のプチはテラの数倍だったよな。

 ヒートとかドライとかやってもらったけど、加減を間違えると干物待ったなしだ。

 属性をもっていない精霊に頼むのが一番かな。

 今度から気をつけよう。


 計算してみた。

 テラの魔法はプチの十億倍。

 てことは精霊の無印は普通の人のプチの2千億倍。

 そりゃ湖の水かさも増えるよな。

 雨を降らしていたけど、平たく伸ばせば、楽に1キロメートルぐらいの範囲がカバーできそうだ。

 知らない事は恐ろしいな。


「ちなみにテラ級の魔法の大きさは?」


 そう俺は尋ねた。


「15メートルぐらいだな」

「うっひゃあ」


「どうした。驚いた声を上げて」

「俺、テラ級の2百倍を食らった」

「それは貴重な体験をしたな。大精霊が行使したんだろ。なら心配は要らない。大精霊にとって魔力は体の一部。魔法は手を使うようなものだ」

「俺、死ぬような体験をしょっちゅうしてるけど、呪われたりしてないよね」

「大精霊といちゃついて子供まで作って平気な男が何を言ってるんだ」

「それはそれ。あれはあれ」

「言葉になってないぞ」


「いやね。女神が悪い」

「女神様の悪口は頂けないな。女神様は偉大だ」

「どんなとこが」

「大規模災害の時に神託を下したり。放浪の民を安住の地に導いたりしている」

「神器の件はどうなんだよ」

「あれは使う人間が悪い。正しく使えばドラゴンも片手で勝てる」

「へぇ、使い終わったらさっさと回収すればよかったのに」

「何か事情があったのだろう」


「まあいいさ。それよりジャガイモを食おう。【国家園】オン。バターよ来い」


 ジャガイモを蒸かして、十字に切れ込みを入れバターを乗せた。


「美味いな」

「そうだろ、新ジャガの味は格別だ。皮をたわしでこすって塩茹でするのも美味いぞ。掘ったばかりのイモだとこすっただけで皮がはがれる」

「そうか、育てた者だけの特権というやつか。ピピデの民で言うとラクーのヨーグルトだな」

「そうだな」


 俺の特権が少ないと感じるのは気のせいか。

 レベルアップしても結局ドレインだしさ。

 子供の出産祝いも苗代に消えるしさ。

 かと言って欲しい物がないんだよな。


 文明の利器はちょっと欲しいかも。

 通販をホームセンターまで拡大してくれないだろうか。

 俺、ホームセンターのお得意様だったんだぜ。

 【サケタの種】と【国家園】にはお世話になったけどもさ。

 ホームセンターでもそれと同じぐらい買い物してる。

 言うだけは無料だし、今度言ってみるか。

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