第22話 ガラガラを作る

 今日は待ちに待った給料日。

 ビニールハウスの教会で俺は祈りを捧げる。


「妖精が増えるのを期待しているぞ」


 そうファルティナから声を掛けられた。

 分かってはいるが魔力がな。

 レベルアップ以外で魔力が増える物があればな。


「ファルティナ様、魔力が欲しいです」

「神器を捧げろ。さすれば魔力を大幅に増やしてやろう」


 おう、レベルアップ以外の方法を頂きました。

 ところで神器って何。


  ◆◆◆


「ランドルフ、居るか?」


 ランドルフのテントの入り口を開け声を掛けた。


「おう、何だ?」

「神器って何だ?」

「お前どこでそんな物騒な話を聞いた」

「女神様から聞いたが不味かったか」

「そうか、女神様からな。女神様もようやく重い腰を上げる気になったか」

「ぜんぜん分からないんだが」


「話してやろう。昔、女神様がな。地上を統一しろと皇帝に神託を下された。その時に下賜されたのが神器だ」

「ほうほう、それで」


「最初は良かった。皇帝は破竹の勢いで国を併合していった。しかし、皇帝は慢心して、神器の手入れを怠った」

「手入れって何?」

「清浄な魔力を神器に注ぐことだ。これを怠って、なんと神器は怨念を吸い込んで、邪器になってしまった」


「落ちが分かったぞ。皇帝は魔王になったのだな」

「そうだ。皇帝は魔王になって人々を虐殺し始めた。慌てた女神は別の神器を勇者に託した」

「またまた、落ちが分かったぞ。勇者は勝ったが、慢心したんだな」

「そうだ。勇者の子孫に馬鹿息子がいて、やっぱり魔王に」


「それで、神器ってのはいくつあるんだ」

「五つだ。全て邪器になっている。使用者が狂う事を分かっていて、各国は邪器を兵器として使っている」

「ということは俺に邪器を回収してこいというのだな」

「厄介な仕事を任されたな。命がけだぞ」

「無理。無理。俺には無理」


「情報だけでも集めておいてやる」

「そうしてくれ。やる気になったら、神器集めをするよ」


「ところで、ジャガイモと唐辛子を増産できないか」

「できると思うよ。給料貰ったし」

「ジャガイモは日持ちがするし、唐辛子は乾燥させると重宝する」

「分かった。ええと、切りのいい所で、千セットでいいか」

「充分だ」


 千セット444,000円なり。

 残金28,916円。

 今月はもうでかい買い物はできないな。


 それより、エリザドラとキャロリアの負担が心配だ。

 聖霊力を使いすぎないだろうか。


  ◆◆◆


 エリザドラとキャロリアを呼んで話をする事にした。


「悪いんだけど、千本の野菜を成長させられるか?」

「少しずつなら」

「そうですね。それなら平気です」


「具体的にはどれぐらいだ?」

「一日百本なら」

「百本が限界ね。覚えておくよ」


「ヴァレアム。会いたがってた」

「ライオネルもです」

「今から会いに行こう」


「よしよし」

「お父さんが遊びにきてくれました」


 彼女達が赤ん坊を抱き上げる。


「あー」

「あう」


「元気に育てよ。何か足りない物はあるか」

「玩具」

「そうですね。そういうのが何かあれば」


 育児の経験の無い俺にはガラガラしか思いつかない。

 竹があれば作れるな。



 【サケタの種】と【国家園】オン。

 ちょうどいいのがある。

 竹のフェンスだ。

 これを解体してガラガラを作ろう。

 塗料や防腐剤が塗ってないと書いてあるから、赤ん坊が舐めても問題ないはずだ。


 俺は竹のフェンスを解体して、ランドルフの助けも借りてガラガラを製作した。

 適当な長さに切り、中に鈴を入れて、取っ手を付けて完成だ。


「そう言えば農具がみんな金属製だけど木はやっぱり高いのか」


 俺はランドルフに尋ねた。


「そうだな。金属はもの凄く安い。魔法を使えば精錬が簡単に出来るからな」

「そうなんだ。鍬の棒が金属だったから不思議に思ってた」

「赤ん坊に、植物から作った玩具を与えるなんて贅沢だ。愛しているのだな」

「ああ、目に入れても痛くないぐらいさ」


「ピピデの民は不心得者はいないが、他国の人間には気をつけろよ。贅沢を羨んで嫉妬する者がでないとも限らん」

「他国の人間が来る予定があるのか」

「商人にこの場所を嗅ぎ付けられた。近々来る事もあるだろう。もちろん聖域には入れないがな」

「その辺は任せるよ」


  ◆◆◆


「ほうら、ガラガラだぞ」

「きゃっきゃ」


 楽しんでくれているみたいだな。

 一人ずつ枕元にガラガラを置いた。


「申し訳ないんですが、ベットに物を置かないで下さい」


 マクシリアに叱られてしまった。

 ベット脇にでも小物入れを作るか。

 いや、袋にでも入れて吊るしておくほうが早そうだ。


「袋に入れて吊るしておいてくれないか」

「かしこまりました」


 赤ん坊の姿に癒されて思う。

 赤ん坊達が成人する頃には平和な世になってほしい。

 邪器なんて物は結局のところ大量破壊兵器みたいなものだろう。

 この世からなくしたい。

 俺に出来るんだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る