第18話 カヌーに揺られて
お茶の樹を植えてから、大精霊達を連れて湖に来た。
暇そうにしている奴もいるからな。
「ウォーターなの」
エーヴリンの魔法で湖の水かさが更に増えた。
精霊も幾人かいるな。
水に浮かんで遊んでいる。
湖の水を子供が桶で汲んでいる。
聖域と何回も行き来して、生活用水に使っているらしい。
年頃の男女が何組も動物の皮で作ったカヌーに乗って湖で揺られている。
お盛んな事で結構。
この人達の子供から俺達の子供の伴侶が産まれるかも知れない。
頑張ってくれたまえ。
もう既にあのビニールハウスの教会で結婚式が行われている。
ビニールハウスが教会っていうと俺なんかはえーっと思うのだけど。
神聖な感じがするそうでピピデの民には受けが良い。
俺は刺繍が施されたテントのほうが高そうで良いと思うのだが。
俺も湖に揺られてみたくなった。
「カヌー借りてもいいか」
「ええ、あなたはピピデの民の名誉長老ですから」
「えっ、いつの間にそんな話しに」
「あなたが使っているテントの刺繍で分かります。あれは名誉長老の印ですから」
「そうなんだ。やたら敬語を使われると思っていたけど、納得したよ」
「カヌーは民の共有財産ですから、気兼ねなく使って下さい」
「さあ、乗るぞ。二人しか乗れないから、順番だ。最初はエーヴリンだ」
「はいなの」
湖の中央に来た所で抱き合って寝そべる。
おー、これはかなり、いちゃいちゃできますな。
致すと舟がひっくり返りそうなんでしないが、たまにはこんなのも良いだろう
「こうして抱き合っていると心臓の鼓動が聞こえますの」
「大精霊は心臓の音がしないな」
「精霊は物質でできてないの。魔力で出来ているの」
「そうなのか」
「鼓動が聞こえるとしたら、赤ちゃんが出来たときなの」
「その日が待ち遠しいよ」
「そろそろ交代しないと不味いですの。みんながおかんむりですの」
俺はオールを漕いでカヌーを岸につけた。
「遅いんとちゃう」
「悪いな。気持ちよかったんで長居しちまった。次はステイニーだ」
「待ってたで」
カヌーを漕ぎ出してやはり中央で抱き合って寝そべる。
「なんか眠たくなってきたよ」
「寝ったらあかん。死んでまう」
「じゃあ生き返らせてくれ」
ステイニーが俺にディープなキスをする。
舌を入れてきたのでやり返す。
やばいムラムラしてきた。
賢者モードがオンなのに。
【賢者モード】オフ。
こんなはずじゃ。
あとでみんなにフォローしとかないとすねるかもしれない。
【賢者モード】をオンにして、カヌーを岸に戻した。
ジョセアラだな。
湖の中央で抱き合うと、腕のトゲのアクセサリーがチクチクと痛い。
「なにっ、そんな目をして」
「いや、チクチクするなと」
「美しい花にはトゲがあるのよ」
「よし、くすぐりの刑だ」
「きゃはははは。ちょっと、息できな……」
「レベルアップ」
「何よそれ、えっ、そんな。なんてふしだらなの」
【賢者モード】オフしてやはり致してしまった。
「次はエリザドラだな」
「楽しみ」
やはり中央に漕ぎ出してカヌーを停める。
「よし、【賢者モード】オフ」
やりすぎて湖に落ちてしまった。
慌ててひっくり返ったカヌーにしがみつく。
エリザドラを見ると空中に浮かんでいた。
エリザドラにも手伝ってもらいカヌーを起こす。
「乾かしてくれ」
「ヒート」
体中から湯気が出て、服が乾いていく。
うん、調子に乗りすぎた。
カヌーを岸に戻す。
「カヌーは駄目だ。自制が効かない」
「それは殺生です」
「有罪。残りの人たちもカヌーに乗せるように」
「そうですわ。小説の一ページみたいでロマンチックなのに」
「しょうがないですの。水魔法で舟を作るですの。これなら引っくり返ったりしないですの」
「なら頼むよ」
「ウォーターコントロールですの」
そして、【賢者モード】オフにして、なんと三周、致してしまった。
ランドルフが言っていたのがよく分かる。
これは十日で死ぬな。
間違いない。
辺りは夕暮れになり、ピピデの民の姿も見えない。
荒野の方向からふらふらと人が歩いてくるのが見えた。
遭難者かな。
「待って不浄の者なの」
「魔獣なのか?」
「生ける屍なの」
アンデッドという奴だな。
「危険なのか」
「死体に負の魔力と邪悪な魂が宿ると動き出すの。爪や歯に呪いが掛かっているの。もの凄く危険なの」
「かすっただけでも、やばそうだな。聖域に不浄の者が入れるか実験したい。攻撃は少し待ってもらえるか」
「はいなの」
まさか聖域に入って来られるとかないよな。
聖域に入れないなら、安全地帯から倒す事が出来る。
レベルアップのスキルを試したい。
幸い動きは鈍そうだからな。
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