第19話 聖水
湖の前でアンデッドを待ち構える。
アンデッドは草が生えている境界まで来ると空中を引っかき始めた。
「聖域が削られているの。湖は聖域としては弱いの」
「どうやって倒すのが一般的なんだ?」
「そやな。聖水ぶっかけるとええと前世の記憶にあるな」
「ステイニー詳しいのか」
「前世は聖職者やさかい」
「他には」
「そやな。負の魔力の攻撃魔法やと元気にしてまう。清浄な魔力で倒すのが一番ええ」
俺にまだ魔力は無い。
倒すとすれば聖水だ。
「聖水ねぇ。どうやって作るんだ。まさか大精霊のごにょごにょを使う訳じゃないよな」
「湖の水が聖水になってますの」
おお、勝てるぞ。
俺は勝てる。
【サケタの種】オン。
噴霧器をゲット。
タンクに湖の水を入れて空気を圧縮。
アンデッドの鼻先にプシューと吹き付けてやった。
安らかな表情になり溶けていくアンデッド。
最後には跡形もなくなった。
やったぞ。
「ステータス・オープン!」
――――――――――――――――
名前:シゲル・リョクテ
魔力:1/1
スキル:
サケタの種
国家園
名前ジェネレータ
言語理解
絶倫
賢者タイム
レベルアップ
残金:
42,066円
次の給与まで28日
――――――――――――――――
「やった! 遂に俺に魔力が! 誰でも良いから魔法を教えてくれ」
「まずは魔力を指先に集めるの。そしてプチウォーターと唱えるの。やってみるの」
「プチウォーター」
3センチぐらいの水玉が空中に現れ地面に落ちた。
どうやら俺は水属性を持っているらしい。
何度も唱えたが、二度と水は出ない。
ステータスを確認すると魔力0の文字が。
魔力1じゃこんなもんか。
◆◆◆
聖域に帰り夕飯にする。
魔獣の肉を食べた時だった。
味は油が乗って美味いのに、どぶを食ったみたいな嫌な感触が身体に広がって行く。
「肉を食ったら嫌な感触が広がったんだ」
「それが負の魔力なの。野菜を食べて打ち消すの」
俺は野菜を食べ、負の魔力が消えるように念じた。
身体に染み渡った嫌な感触が消える。
異世界人はこんな感触と戦っているのか。
野菜と肉を一緒に食べたら、嫌な感触は広がらないと分かった。
魔獣肉オンリーのステーキは食べたくないな。
その夜。
エーヴリンと致していたら、エーヴリンが声を上げた。
「できたの。赤ちゃんが宿ったの」
「遂に俺もお父さんか。こうしちゃいられない。準備しなきゃ」
「準備は要らないの。見てて」
エーヴリンはそう言うと精霊の樹の所に行って、樹と同化した。
精霊の樹が光を放つと、樹の根元に耳が長い赤ん坊が元気な産声を上げていた。
妖精の出産は凄い簡単なのだな。
「可愛い子だ。ええっと男の子だな。名前はドルファスだ」
「はいなの」
エーヴリンが樹から現れ言った。
「「「「「「おめでとう」」」」」」
他の大精霊が声を揃えて祝ってくれた。
「魔力が無いと妖精が産まれないとは迂闊だった。もっと早く気づいておれば。まあいい、私からもおめでとうと言っておこう」
ファルティナからも祝いの言葉を頂いた。
「そうだ。ステータス・オープン!」
――――――――――――――――
名前:シゲル・リョクテ
魔力:0/-99
スキル:
サケタの種
国家園
名前ジェネレータ
言語理解
絶倫
賢者タイム
レベルアップ
残金:
142,066円
次の給与まで27日
――――――――――――――――
なぬ、ドレインを食らっている。
魔力の分母がマイナス99だ。
これ、普通なら死んでいるんじゃないか。
今までは魔力ゼロだったから、ドレインを食らわなかったのか。
女神さんよう、もうちっと説明してくれても良いんじゃないの。
死なない理由は絶倫スキルのせいか。
大精霊がサキュバス並みと言われるのが良く分かった。
◆◆◆
ドルファスが風邪を引かぬようテントに連れて行き清潔な布で包む。
今は眠っているらしい。
突然、ドルファスが泣き出した。
おしっこか。
布を触るが濡れていない。
「よしよし、恐がらなくて良いんでちゅの。恐いのはお父さんがやっつけてくれるの」
エーヴリンがドルファスを抱き上げてあやす。
「大変だ。不浄の者の大軍が攻めて来る」
ピピデの民の若者が血相を変えて触れ回っている。
「レベルアップのボーナスステージだ」
俺は噴霧器を担いで出撃した。
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