第9話 広がる聖域と性域

 前は200メートルだった草原の範囲が400メートルほどに広がっている。

 これは聖域が広がったっていうことなのかな。

 今日はジョセアラとデートだ。

 大亀が雑草を食べに来ていた。


「湖まで送ってほしい」


 今朝、採れたてのきゅうりを一本差し出すとそれを食べ大亀は頷いた。

 俺が先に甲羅によじ登り、手を差し出してジョセアラを引き上げる。


「甲羅の上は滑るから、気をつけろよ」

「ばっかじゃないの、私達が飛べるのを忘れているわよ」

「でも、さっきは俺に引き上げられていただろ」

「別に、手を繋ぎたかったからと言うんじゃないわ。精霊力を無駄使いしたくなかっただけよ」

「まあ、何でも良いが」


 不思議パワーの事は精霊力と言うんだな。


 大亀が歩き始める。

 大亀の背中で揺られてジョセアラがすべり落ちそうになった。


「きゃっ」


 俺はジョセアラの腰を引き寄せた。

 真っ赤な顔のジョセアラ。


「触らないで」

「ごめん、落ちそうだったから」

「ううん、いいのよ。ちょっとびっくりしただけだから」


 なんとなく気まずくなって無言で湖についた。


「わぁ、綺麗」


 あれ、前に来た時と違う。

 湖の湖底がきらきらと光る物質に置き換わっていた。

 それを太陽の光が反射して神秘的な光景としている。

 ここも聖域になったのかもな。


 ジョセアラは靴を消すとくるぶしまで水につかった。

 そして笑顔で水をすくうと俺に掛けてきた。


「やったな。お返しだ」


 俺は水をすくい、ジョセアラにお返しした。


「生意気よ。これでどう」


 五つの水玉が空中に浮かんで俺の方に飛んでくる。

 俺は慌ててけた。


「精霊力の無駄使いじゃないか」

「練習よ、練習。楽しかった訳じゃないんだからね」


 しばらく水を掛け合い、楽しいひと時を過ごした。


「そろそろ、帰るか」

「ええ」

「大亀、お前を湖行き定期便の運転手に任命する。帰りも頼むぞ」


 俺達は大亀に揺られ帰路についた。

 何か不機嫌なジョセアラ。


「何か気の障る事でもしたか?」

「察しなさいよ」


 えっと、機嫌が悪くなったのは大亀に帰りの便をたのんでからだ。


「もっと、遊びたかったのか?」

「もう、鈍い男ね。逆よ、逆」


 遊びの反対だから仕事か。

 仕事が欲しかったのか。


 毒魔法が使えるんだったな。

 そうだ。

 害虫退治を頼もう。


「ジョセアラ、虫退治係を命じる」

「あなたの為にやるんじゃないんだからね。虫食いの野菜が格好悪いから」

「まあ、頼むよ」


 まだ、機嫌が少し悪い。

 甲羅の上でジョセアラが俺にぴったり身を寄せる。

 スキンシップに飢えているのか。

 俺は腰に手を回した。


 顔は赤いが嫌がっている風でもない。

 顔を俺の方に向け目をつぶった。

 むっ、なんの合図だ。

 キスしろってのか。


 しょうがない奴だな。

 ついばむようにキスをしてやった。

 とろけたような顔になるジョセアラ。


 俺は聖域に着くなりお姫様だっこでジョセアラを抱き、甲羅をすべり降りた。

 【賢者モード】オフ。


 ビニールハウスに二人で入り、致してしまった。

 あー、ジョセアラもハーレムの仲間入りか。

 チョロインさんだったとは、迂闊だった。

 気づかなくごめんよ。


「他の二人に嫉妬とかしないのか」

「別にあなたが偉大な人だから、一人の女では支えられないなんて考えていないんだからね。精霊はそういう感情はないんだから」

「これからもよろしく頼むよ」

「はい」


 はにかんだ笑顔が可愛くて、また致してしまった。

 やべっ【賢者モード】オンにするの忘れてた。


  ◆◆◆


 賢者モードになり、俺はみんなを集めた。


「俺は責任を取る男だ。エーヴリンとステイニーとジョセアラは結婚したい。三人共受けてくれるか」

「うれしいですの」

「しゃあないな」

「うれしくなんてないんだから」

「俺は三人が受けてくれて嬉しいよ」


「仲間はずれは悲しい。私も立候補」

「私もです」

「二人も結婚してくれるのか。俺は果報者だ。苦労をさせないとは約束できないけど、大事にするよ」

「そういう言葉はプロポーズの時にいいなさいよ」


「すまん、気がきかなくて。苦労をさせないとは約束できないけど、大事にするよ。結婚してくれるかい」

「はい、なの」

「うちをもろうてくれへん」

「二度もしなくていいのに」

「はい」

「お受けします」


 エリザドラ、キャロリアもハーレムに加わるのか。

 女神が絶倫をつけた理由が良く分かる。

 普通の精神ではこんなの無理だ。

 仕方ない【賢者モード】オフ。

 大宴会ならぬ大艶回になってしまった。

 くそう。

 なんだか、女神に乗せられている気がする。

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