第8話 暗闇の果し合い

 夜、風の音で目が覚めた。

 だが、不思議とビニールハウスは揺れていない。

 充電式LED照明を持って外に出ると風は吹いていなかった。


 聖域の端に行くと砂嵐が壁になっていて、聖域に吹き込まないようになっている。

 ステイニーが一人聖域の外に向かって手を広げていた。


 彼女が食い止めているのか。


「お疲れさん」

「こんなの大した事あらへん」

「ちなみに何なら大した事なんだ」


「うち、今むちゃくちゃ暇ですねん。それがなんちゅうか、つろうて」

「なら、一戦どうですか?」

「ムードの事を言うて置いてこれやさかい」

「一手ご所望つかまつる」

「あーれー」

「のりのりだな」

「そうや。前世ではエッチをやった事がなかったけど、こういうのも悪くないもんや」


 うん、致してしまった。

 何回か致しているうちに、砂嵐は止んでいた。

 空は満天の星。

 なんとなく神秘的だな。

 けっして致しませんぞぉ。

 致しては荘厳な雰囲気が台無しだ。


  ◆◆◆


 朝になり日課の収穫を行う。

 きゅうりなんかは採れはじめると一ヶ月は実がなる。

 手入れは雑草の駆除と虫対策だ。


 体が1メートルぐらいの鳥が5羽が飛んで来るのが見えた。

 翼を広げると5メートルはありそうだ。


「気をつけや! 魔獣やで」


 やはり鳥は聖域に入れず周りをグルグルと回っていた。

 俺はきゅうりを収穫して聖域の縁で振ってみた。

 魔獣は反応を示さない。

 さすがにきゅうりは食べないか。

 こいつら肉食かな。

 それ以外だと甘いものか。


 そうだ。

 俺はビニールハウスに行き木箱からリンゴを取り出した。

 さっきと同じ様にリンゴを手に持って振ると鳥魔獣は地面に降りて来た。

 俺はリンゴを五つ投げてやった。


 鳥魔獣は口にリンゴを咥えると天を向いて飲み込んだ。

 光輝き浄化される鳥魔獣達。

 やっぱりこうなったか。

 俺の野菜でなくともこうなるのだな。


 リンゴ農家の愛情がきっといっぱい詰まっているのだろう。

 鳥は聖域の中に入ってくると虫をついばみ始めた。


「手伝ってくれるのか? ありがとよ」


 ゴーヤの実が光ると精霊が産みだされた。


「ごや」

「鳥と遊んどって」


 見た目幼児の精霊と鳥が空中で戯れる。

 長閑だな。


「うちも遊ぶで。フライ」


 ステイニーが入って空中で鬼ごっこが始まった。

 ひらひらとドレスの裾がめくれる。

 白い生足が見え、むらむらしてきた。

 この見えそうで見えないのがエロいんだよな。


 おやつタイムになり皆でリンゴを頂いた。

 俺のむらむらは収まらない。


「なっ、この後良いだろ」

「今日はちゃうやり方やったる。女神様におそわったんや」


 この後ちゅっぱってちゃっぷすされた。


「もしかして、そのやり方でも子供ができるの?」

「よう分かったな。そのとおりや」


 大精霊不思議だな。

 もしかしてぶっ掛けても出来るのか。

 そうに違いない。

 これはプレイの幅が広がるな。


 俺ってこんな変態だったか。

 やばい。

 絶倫スキルに翻弄されてる。


「ファルティナ様。絶倫スキルが強力すぎます」

「めんどくさい男だな。ほれ」


「ステータス・オープン」

――――――――――――――――

名前:シゲル・リョクテ

魔力:0/0


スキル:

 サケタの種

 国家園

 名前ジェネレータ

 言語理解

 絶倫

 賢者タイム

残金:

 185,234円

 次の給与まで24日

――――――――――――――――


 【賢者タイム】オン。

 ふう、ちっともムラムラこない。

 これはこれで虚しいな。

 おりを見て適度にオフにしよう。


  ◆◆◆


 鳥達は夕方になっても帰らない。

 どうやらここが気にいったらしい。

 甘い物が欲しいとしたら、みかん辺りはどうだろう。


「なによ。私の事を放っておいて、また新しい女」


 考えを呟いていたらしい、ジョセアラに聞かれてしまった。


「ツンツンするなよ。可愛い顔が台無しだ」

「ふん、おだてたって駄目なんだからね」

「じゃあ、湖を見に行こう」

「約束よ。破ったら承知しないんだから」


 日も暮れて、うふんあはんタイムがやってきた。

 ステイニーとも湖に行く約束をしているな。

 どっちを優先しよう。

 【賢者タイム】さんはジョセアラを優先しろと囁いている。


 【賢者タイム】オフ。

 暗闇の果し合いの結果、ステイニーが順番を譲ってくれる事になった。

 【絶倫】さんもたまには役に立つ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る