第2話 美味しく頂かれる

 まずは。


「ステータス・オープン」


――――――――――――――――

名前:シゲル・リョクテ

魔力:0/0


スキル:

 サケタの種

 国家園

 名前ジェネレータ

 言語理解

残金:

 300,000円

 次の給与まで29日

――――――――――――――――


 女神が言ったものは揃っている。

 なぜスキル【サケタの種】と【国家園】が手に入ったかだが。

 俺が頻繁に使用する通販サイトだったからだ。

 【サケタの種】と【国家園】は主に園芸用品を扱っている。

 でもそれだけじゃない。

 贈答品や防災グッズなんかも扱っている。

 特に傷有りの訳有り品は安くて大家族にとってありがたい存在だ。

 そりゃ大規模通販のamezonなんかに比べたらしょぼいけども生きて行くには十分だろう。


「こっちに来て」


 異世界語を意識して喋る。

 俺は三人を呼んだ。


「俺はシゲル。君たちの名前は?」

「名前は忘れたの……あなたがつけてなの」


 こういう場面を想定して【名前ジェネレータ】をくれたのだな。

 【名前ジェネレータ】オン。


「スレンダーな君はエーヴリン。グラマーで緑な君はステイニー。紫の君はジョセアラ」

「うれしいの」

「いいんやない」

「好きにすれば」


「三人は何ができる?」

「水魔法ができるの」

「風魔法や」

「毒魔法よ、悪い」


「いや、悪くないよ。これからも戦闘は頼む。俺は何もできないからさ」

「よろこんでなの」

「おっさん、まかしとき」

「守ってやっても良いわよ」


「じゃ改めてよろしく。お近づきの印に乾杯しよう」


【サケタの種】オン。


 さすがに酒は売ってないか。

 おっ、甘酒があるぞ。

 これでいいか。


 空中から箱が現れて地面にゆっくりと降ろされた。

 次はつまみだな。

 【サケタの種】には梅干ぐらいしかない。


 【国家園】オン。

 【国家園】には肉がある。

 しかし、火がない。

 生肉は食えないし、凍ったウインナーも願い下げだ。

 無難にさば缶かな。


「よし乾杯しよう。乾杯!」

「かんぱーい!」

「気が利いてるやん」

「やさしくしたって関係ないんだから」


 甘酒のコップはないのでラッパ飲みだ。

 おっさんがやると色気はないが、美女がやるとなんとなく色気があるな。


「さて、問題が一つ。寝る所をどうするかだ」

「私達は野菜に入って眠れるの」

「そんな、俺だけかよ。地べたの上で二日連続は嫌だ」


「しょうがない、おっさんやな。綿を出したろか?」

「何っ、そんな特技が」


 通販で使えそうな物を探す。

 マットが売っていたが32,800円。

 高い。来月になったら買おう。

 昨日は意識しなかったが、虫が恐い。

 どんな寄生虫がいるか分からん。

 ということで小型のビニールハウス。

 28,300円なり。


 組み立て作業は小一時間で終わった。

 しょせん小型ビニールハウスだ。

 砂嵐がくると一発で飛ばされそう。

 しかし、家がある安心感は必要だ。


 トイレットペーパーが欲しい。

 最悪葉っぱという手があるが、何かないか。

 使い捨ての高機能マスクがある。

 高いがやむを得ない。

 百枚で8,580円だ。


 次の問題は食い物のほとんどが防災グッズと贈答品って事だ。

 高いんだよ。

 でもしょうがない。

 七年持つパンが三個で1,980円。

 水で食えるご飯が三食で1,490円。

 電子レンジがあれば冷凍食品が食えるところなんだが。

 無い物はしょうがない。

 水がペットボトル三本で1,490円。

 ペットボトルが欲しいので買う。

 防災グッズってなんでこんなに高いのかね。

 文句言っても仕方ない。

 ペットボトルの水を飲んだら魔法で水を詰めてもらおう。


 俺は一つ推測を立てた。

 きゅうりの大精霊が水魔法でゴーヤが風魔法でナスが毒魔法。

 なんとなくイメージで属性が決まっている。

 きゅうりは水をたっぷり含んでいるし。

 ゴーヤの本場は台風も多い。

 ナスは毒ナスから毒のイメージが来ているのだろうな。

 火魔法を使いたかったら、唐辛子だ。


 鷹の爪の苗カモン。

 348円なり。

 さっそく植えた。

 明日の朝が楽しみだ。


 食い物が高いのは大精霊を増やせという女神の思惑が透けて見える。

 それと食器や調理器具が欲しい。

 なんで防災グッズにないんだ。


「ねぇ、君たち食器なんて出せる?」

「ごめんなさい、私には無理なの」

「種を二つに割って、それを皿にできるで」

「使えない男ね。トゲで箸が作れるわよ」


「ありがとう」

「お礼を言われるほどやない」

「ふん、あなたの為にやったんじゃない。私達も手づかみはどうかと思ったから」


 十五センチほどの固い種と箸と同じぐらい大きさのトゲを貰った。

 種を割って皿を作る。

 そしてトゲの先をハサミで少し切って箸にした。


 綿をもらい寝心地を確認する。

 綿はしっとりとして青臭いにおいがした。

 石鹸は通販スキルで買えるから明日は綿を洗おう。


 驚く事に彼女達は食べなくても生きていけるそうだ。

 差別だ。

 女神に訴えたい。

 一人さびしく、大して美味くない保存食を食ってビニールハウスの中に入る。

 見張りは三人が交代でしてくれるそうだ。

 たぶん寝る必要もないんだろうな。


  ◆◆◆


 昨日は興奮して気づかなかったが、夜は冷える。

 ぼんやり光る充電式LED照明を見ながら考えた。

 なんとかなったな。

 今日も生き延びられた。

 ビニールハウスの入り口のファスナーが上がる。

 見ると全裸のエーヴリンがいた。

 何をと言おうとしたら指で口を押さえられた。

 そして、美味しく頂かれてしまった。

 野菜食べるのはこっちなのに。


 おめでとうと脳内に響き渡る声。

 この声は女神。

 こうなると知ってやがったな。

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