「Me before you」 -REVIEW


 Me before Youという映画を見た。「世界一キライなあなたに」という邦題がついている。


 この映画、実は原作は小説らしいが僕は読んでいない。けれどもサム・クラフリンの優しそうな笑顔のキャプチャに惹かれて鑑賞した。


 とりあえずの感想言っていい?


 めっちゃ良かった。めちゃ泣いた。久しぶりのど真ん中でボロボロに泣いて感情渦巻いてとりあえず観終わった後もう一回邪魔されずに見ようと思った。


あらすじ

(※エンディングネタバレ含むので注意) 


 事故で首から下が殆んど動かなくなり、心を閉ざした車いす生活を送るお金持ちの障害者ウィル(サム)はヘルパーを募集していた。カフェを首になって仕事を探していたルーという女性がヘルパーとして雇われるが、実はそこには既にちゃんした医療ヘルパーがいた。彼女の本当の役目は介護ではなく、彼を勇気づける友達になるというもの。しかしいままで憐れまれ身体が思う様に動かない苦しみを抱え卑屈になっているウィルはなかなか心を開かず憎まれ口ばかり叩いて上手くいかない。底抜けに明るいルーは奇抜なファションに身を包み、彼を励まそうとするけれど空回りする毎日。

 ある日ウィルの余りの悪態ぶりにブチ切れたルーは、自分はウィルが好きでここにいるんじゃなくてお金の為に居るんだと言ってしまう。じゃぁ辞めろと言われても、自分の雇い主はあなたのお母さんであって、貴方じゃないのよと啖呵を切る。正直に話したからか、ウィルとルーはそれから少しずつ距離を縮めてゆき、次第に心を許し合う様になる。ルーの明るさに救われるウィル。ルーもウィルが心を開いていくのを喜んでいた。しかしウィルには秘密があった。


 身体の機能が低下してしまっているウィルの体は弱く、病気にもなりやすく、脊髄を損傷しているから回復の見込みはない。リハビリをしても悪化を防ぐだけで改善は見込めない。度々病気になり日々激痛に耐え続けるウィルはスイスの安楽死の自殺幇助機関で半年後に安楽死する事を決めていた。ウィルの母親はそれを止めたい、父親は苦しむ息子を尊重してやりたいとそれぞれ想いを抱えていた。


 ルーはそれを知り、何とかウィルの力になりたいと考え、あらゆる方法で彼を元気づけようとする。自分の彼氏を差し置いてもウィルを優先してとうとうウィルを愛してしまう。同じようにウィルも自分を笑顔にしてくれるルーを愛しく思う。


 だがその愛しさでさえ、ウィルには歯がゆいものだった。キスしたくても自分からは出来ない。抱き締めたい時に抱き締めたくても腕は動かない。愛おしければ愛おしい程、ルーがこの先普通に暮らしていれば手に入る幸せを自分は与える事が出来ない事を悲しむ。彼女の未来を奪う権利など自分にはない。そして一生どうやっても動かない体と痛みに耐えながら、毎朝まだ生きているのかと絶望する日々をこれ以上迎えたくないと硬い意思を貫く。


 いとおしそうに最後のキスをする二人は眩く、ウィルはそれまで生きていられたことに感謝していた様に見えた。そしてやっと苦痛から解放されて楽になれると安心しているようにも見えた。


 苦しみから解放されたウィルは、ルーに遺産を残し、自由な人生をプレゼントとして送った。彼女は家族のためやお金がないからと人生を諦めることなく、可能性を信じて生きていく。

ーあらすじ終わり。


 この映画は自殺幇助だ、安楽死推奨をしていると障がい者団体から非難を浴びた作品らしい。だが僕は自殺する事さえ出来ない人間の最後の尊厳はその人が選択できるものであっていいと思う。今の世界は死が悪いものである事が問題であると思う。死は必ずやってきて別段悪いものではない。寧ろ死が有るからこそ世界は動いている。生が死の苦しみを超える時、人は死を選べても良いのではないかと普段から思うのだが、この映画の主人公の様に自分で死ぬ事すらままならない生き地獄にいるなら尚更苦しみから逃れられる方法を与えられるべきだと思う。悲しいかなその安楽死でさえ、実は金持ちにしか与えられていないという事実が恐ろしい。


 日本では合法的に安楽死を選ぼうとしてもできない為、スイスに行くしかない。そして安楽死をスイスで受けるには語学力も必要だ。医師でさえ苦しみから解放させてあげられないのに、延命措置をつけたら二度と外せないといったような法律も、現代医学の暴力だと個人的に思う。助けるだけ助けてその後の苦しみはどんなに辛くても耐えろだなんて。一度生命維持装置を付けたら、どんなに苦しくてもそれを取り外すことは違法となる。おかしな仕組みだ。


 よくある障害者とそれを助けようとする人の恋愛映画だと思っていたけど、中身の濃い素晴らしい映画だった。出だしが「最強の二人」(フランス映画)によく似ているなと思ったけど、全然違うストーリーで楽しく、悲しく、そして久しぶりに深く考えさせられる映画だった。


 ただこのMe after youの邦題のセンスが凄く残念。ネットでも物議を醸していたけど、誰よ、このタイトル付けたの。この深い意味を持つ英語タイトルを世界一キライだなんて言う言葉にする意味がわからないけど、映画は素晴らしいので是非見て欲しい。


小説には続編After youもあるらしいです。

気になる。


 

 

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