六話_畳まれた日常を糧とする暴力
背後から声をかけられた。その声の精神性を色で表すことが許されるなら、黒と赤。
「そうだろ? お前なんだろう」
何度もそうやって呟いているので、ゲシュタルト崩壊を起こし、意味をまるで理解できなかった。
「お前?」
とりあえずオウム返し。
「お前が”氷使い”だろ!?」
違う。その言葉が届く前に、彼の持つ花から、魔法が放たれた。しかたない。戦闘開始だ。
何かが飛んでいる。把握しろ、把握。
すんでのところでしゃがんで回避を成功する。背後をちらと確認すると、壁が熱気で溶けている。
「違いますよ。私じゃない」
聞く耳もたずだ。
私がよけきれても、このままだと船がまずい。どう考えても気狂いの自傷行為にしか見えないし、やはり退治するしかないか…。
【
こころで唱えたその瞬間、男は180°反転した方向を向いた。
気が付くまでの時間。私にとってその時間は、無敵である事に等しい。ゆっくりしかし確実に近づき、首筋にホルスターから抜いたナイフを突き立てる。
「私の花も熱を帯びていた。今ここでお前に試してもいい」「そうだな…氷使いではない証拠をみせようか」
「殺してくれ…。こんな”花”があると、いつか船を爆破させてしまう」
「あっそ」
脳天を基点に【
気絶した男から、とりあえず”花”を回収する。いろいろ試すが、魔法は発動しない。
「どうやら人の花では魔法は使えないみたいだな」
そういえば。氷漬けの彼女の”花”はどこにいった? そう思い、男の服をまさぐると、萎れた”花”が出てきた。
「使用者が死ぬと萎れるのか…?」
どっちにしろ本人でなければ”花”の力は確認できない。しかし、意味もなく、萎れた花も回収することにした。
さて。縄もダクトテープもないし、早いところ秋井戸たちに知らせなければ。
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