08 (epilogue.)

「よいしょっと。はい。レベッカです。失礼しますよ」


 誰。もう、分からない。


「あ、おいおい早まるなって。早まっちゃいけない」


「死なせてよ。もう、疲れたの」


「だめでしょさすがに。ようやくこの惑星の中心になってる人間見つけたのに。死んだらあんた、惑星壊れるわよ」


「かまわない」


 彼がいない世界。どうでもいい。死んでもいい。


「警察に電話しちゃうぞ。自殺はまずいって」


「電話してみたらいいんじゃない?」


「え」


「あなたが不法侵入で連れて行かれるだけ。私はそのあとで自由に死ねる」


「だからやめとけって」


「どうやって入ってきたの。ここ地上8階なんだけど」


「いや、普通に。翔んで来た」


「あはは。わたし。本当におかしくなっちゃった」


「おいばか。まず自殺をやめろ」


「おかしいね。ほんとに。おかしい。彼のことに何も。何も気付かずに。わたしは。自分勝手に」


「おかしいわけないでしょ。正常な人から死んでいくのよ。ようわからんけど、あなたはおかしいから死ぬわけじゃない。純粋で、まっすぐだから、死ぬのよ」


「じゃあ、出ていって。彼以外は、いらないの」


「出ていったらあんた死ぬでしょ」


「だから何」


「それはさ、まずいじゃん。惑星消し飛ぶから。詳しい説明は省くけどさ、あなた今、この惑星の中心なの。あなたは普通に生きて普通に死なないといけないの」


「知らないわよ」


「だめなんだって。あ、このゲーム買ったのか。バグってたでしょ」


「さわらないで。彼との、最期の想い出なの」


「あ、なんとなく判ってきた。彼氏死んだから後を追おうってわけね。自己紹介してなかったわ。私レベッカ。魔法少女で宇宙海賊」


 レベッカと名乗った女。ゲーム画面を指差す。


「ええとね、彼はね、このゲームで例えると、正常なザコキャラ。ザコだからすぐ死ぬ」


「彼は。ザコじゃない」


「うんわかる。わかるから死ぬのだけはやめて。あなたが死ぬとね、バグが起こるわけよ。惑星レベルの。わかるかな。このゲームみたいにバグっちゃうの。だから死んじゃだめ」


「しらない。そんなことどうでもいい」


「じゃあもう判りました。レベッカよおおく判りました。死ね勝手に。もうこの惑星は無し。終わりです全部」


「いま行くね。すぐに」


 視界が。


 なくなった。


「ひとりじゃないよ。わたしも。となりに」


 それ以上は、言葉が、出なかった。

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