明日低
普段飲まないスパークリングワインなんぞに手を出してしまったのは世間のクリスマスムードにあてられてしまった以外に理由などなくまったく浅ましく恥ずかしいと思うのだが特別な感じのする夜に俺は少しばかり浮き足立っていたのであった。
栓を抜くとポンと乾いた音がした。鼓のようだなといきなり雰囲気をぶち壊す感想が生まれ溜息。一人で聞く泡の音はわびさびが過ぎて物悲しい。
気を取り直してアスティだかなんだかとかいう種類のスパークリングワインをグラスに注ぐ。シャンパングラスなんぞないからタンブラーだが、普段見慣れぬ薄黄金色の液体が注がれるだけで非現実的な空間に置かれたような気分になる。さすがボトル一本千二百円の高級酒なだけある。ブラックニッカの高い方なら同じ値段で度数が6倍程かつ二日は持つというのにこいつは飲み切り推奨だ。どうせならビールのロング缶を二本買った方が良かったのではと思わなくもないがそれをいったら身も蓋もない。古来より日本人は粋を重じる人種である。野暮はいいっこなし。さぁ、飲もう飲もう……
……
……甘い。
なんだこれは。ジュースか? こんなんじゃまったく酔えん。養命酒の方がなんぼかマシである。
チビと飲み、少し減ったグラスを見る。
まだこんなにあるのかと思うと物悲しい。ブラックニッカを、ビールを買えばよかったと激しく後悔。あぁ、くそう。クリスマスなんて大嫌いだ。
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