一人の夜に

 淫夢を見た。

 巷で話題のゲイビデオじゃない。正真正銘の交姦だ。そのおかげで久しぶりの欲情を催し、処理に困った。


 どうしたものかとしばし悩む。いい歳をして自慰に耽るも情けないので、どうせなら女を抱きたい。さりとて俺は一人だ。頼む相手などいやしないし、今から作るというわけにもいかない。となれば手っ取り早く夜の店だが、慢性的な金欠病に悩む身からすれば、そんな豪遊ははばかられる。


 安い店なら……

 いやしかしどうせ行くなら……


 悶々とした心を持て余しながら冷静に現実と向き合う。手持ちは五万。いけない事はないが、楽しむには幾らか心許ない。スマートフォンでクーポンなどを吟味しながら、ひたすら悩む。



 馬鹿らしい。



 そんな事をしているとあまりのくだらなさに嫌気がさしてきた。快楽のみを求める性行為など無益このうえなく、くだらない行いではないか。そもそも女を金で買うなどなんたる蛮行か。人権侵害も甚だしい。男女平等が叫ばれる昨今において売春に準ずる行為など許されるはずもない。俺はヒューマニストでありモラリストだ。古来より続く悪しき商いに利益をもたらすなど許せるわけがないだろう。やめた! 寝る!


 スマートフォンと丸まったティッシュを放り出し、ウィスキーを煽り横になる。布団の中は少し寒く、寂しさが俺を抱いた。

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