悲しみよ帰ってくれ
やる事もなく棚を漁るとサガンが出てきた。
懐かしいなと思い惰性でページを捲ると照れ隠しの含み笑いが溢れる。一ページに何本も走る感想やら感傷やら感動やらなんやら。中には若いポエムが混じっていたりして、なんというか、幼稚園の頃にやった劇のビデオでも観せられているような感覚になる。
美しき者の死が私を美しくするだろう。
しかしその美しさには影があり、また、やはり、死に向かっていくのである。
かっこいい事を書くなぁと思いながらページを捲る。捲る。捲る……
愉快な気持ちが次第に沈んでいく。若さの光が強く、痛い。
惨めだ。たまらなく惨めだ。まさか過去の自分に見下されるとは思わなかった。時を超えた自己否定が心に刺さり、ジクジクと出血を伴わない傷をつける。
歳を取った。それだけで、それだけの事で、こんなにも、こうまでも、酷く悲しくなるものか。
醜い者が生きている。
その醜さには救いなく、やはり死に向かっていくのであるが、死ぬまでもがき生きるからこそ、醜悪なのである。
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