何もやる気が出ない。

 帰宅して着替えると動けなくなった。それから三時間が経ち、やはり床の置物のままと化している。湯を浴び、食事を摂り、食器を洗い、酒を飲まねばならぬというのに、どうにも身体が動かず、頭も鈍い。


 目を開けていると異様に光が明るく感じるが、閉じるとそわりとして落ち着かない。いっそ転寝でもすれば動けるようになると思うのだが、眠る事すらできないのである。いやはや参った。どうにもできん。


 このまったく無駄な時間がなければ余暇も増えるというのに、難儀なものだ。このまま死ねれば楽なのではあるが生憎と心臓は平常に動いているし身体に熱もある。ほとほと自分の健康体に呆れる。もう少し虚弱であれば、さっさと死ねたものを。


 肩の力を抜き、ようやく寝返りをうつ。生きていると、死んでいないと、誰かに見せようと、身体が勝手に反応したような気がする。だが、それが思いもがけない物を見つけてしまったのだった。


 黒く、邪悪なあいつが、すぐそばにいたのだ。


 俺は跳ね起き一目散に部屋を出て近くの居酒屋に向かった。夜通し飲まなければやっていられなくなったのだ。あぁまったく、難儀な事だ。

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