寝ていたら窓の外は茜模様で刻一刻と休日の終わりが近づいているのを実感できた。


 長い溜息が肺腑から出る。息に酒気が入っていて気持ちが悪く、頭も痛い。昼に入れたウィスキーが悪く作用しているようだ。こうなると分かっているのに止められない。休みは昼から酒に浸って寝て、目覚め悪く夕方に起きるというのが習慣になってしまっていた。他にやる事がないし、やりたくないのだ。

 覇気の起伏が底で平衡を辿っている以上自堕落に耽るのは無理からぬ事だろうが、最近は酒の量が増えている。仕事などどうでもいいのだが、理不尽に評価がされないとやはり腑に落ちず不貞腐れて自棄の勢いに任せ酒を身体に流してしまっていた。長生きする気はないが、肩膝や内臓に痛みを覚え始め、近頃未来を想像するのが恐ろしい。


 しかしだからといって断酒などは考えられない。酒がなくなれば俺は何もなくなる。仕事をして飯を食って寝るばかりの人生しか送れないのだ。それを考えるとやはり、恐ろしい。


 性懲りもなく卓に置いた、栓を忘れたウィスキーを手に取り喉を鳴らす。底に溜まった鼈甲を下すと食道から胃にかけてが熱くなり、悪心も頭痛も和らいでいく。いつ手が震えだすか分からないが、それまでは生きて飲んでいたい。


 茜色が金色に変わる。この後に訪れるのは夜の闇だ。明けぬ夜はないと言うが、暮れぬ朝もない。俺の生は今、漆黒の夜に覆われている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る