【朗報】勇者さん、ノアの方舟をつくってしまう
果てしなく続く青い海。
その海上には数百隻を超える船が密集し、
大船団を形成している。
――あぁ、また
なんかやってるわぁ……
空から海上を見下ろすアリエーネ、
久しぶりに現地まで視察に来たのだが、
これにはもう嫌な予感しかしなかった。
千里眼で見渡してみても
陸地らしきものが
影も形も見当たらないのだ。
「おい、クソババァ、どうだ?
俺が用意したノアの方舟大船団は?」
アリエーネの元に来た勇者
――あぁ、この子
もう空を飛べるようになったんだ
さすがSSSRだけあって
能力の覚醒が早いわね
「ノアの方舟?」
「そうだな、ノアの方舟だ」
そのネーミングからして
アリエーネにはすでに大体の察しはついていた。
――どうして、この子はいつも
天変地異から入るんだろうなぁ
核汚染、氷河期と来たら
次は大洪水という訳だ。
「この世界から、地表を無くした」
――あぁ、やっぱりかぁ……
「正しくは、海の水位を上げて
この世界を海に沈めた、だな」
「水棲の魔族や魔物なんかは
まぁしょうがないとしても、
地上の敵はこれでほぼ全滅しただろ」
とは言え、実際に
嵐や台風などの大災害を起こして
大洪水とノアの方舟を再現している訳ではない。
「海水はどうやって
増やしたの?」
「『転移強奪』で
大量に海水を強奪して来た」
――えっ!?
それ、天我くんの世界、
水無くなって滅ぶよ?
帰るとこなくなっちゃうよ!?
「心配するな、クソババァ
海面から一メートル程度
水位が下がったぐらいに、
ちゃんと分量を調整して
人間世界から強奪して来ているからな」
――それ、めっちゃ多いからね!?
生態系とかまぁまぁ狂う感じだからね!?
「その代わり、足りない分は
また他の異世界からも強奪して来ている」
――えっ!?
前回に引き続き!?
他の異世界も生態系ぐちゃぐちゃだよ!?
いい加減にしないと怒られるよ!?
「あとは、人間世界から
第八艦隊とか原子力潜水艦とか
軍事力をもろもろ強奪して
船団の護衛でもさせれば、
水棲の魔族も撃退出来るだろ」
――それ、
向こうで軍事バランス崩れて
世界大戦起きちゃうからねー!?
それを言い出すと
核ミサイルが大量に消失した段階で
世界大戦が起こっているはずなのだが。
「お前達、神々が
人間の命にうるさいからな、
今回はそこも配慮してやったぞ」
それがノアの方舟大船団であり、
この世界で暮らしていた数十万の人間達は
天我の指示の下、
すでに船に避難している。
「一隻で三千人以上が乗れる
超豪華客船ばかりだからな」
――ホントだぁ、よく見ると
ノアの方舟感まったくゼロだよ?
ノアの方舟って木で出来た
古い感じの舟じゃないの?
これじゃぁ、ただのお金持ちの
世界一周旅行にしか見えないよ?
「この船も
いろんな世界から転移強奪して来た」
――他の異世界に
超豪華客船ってあるの!?
確かに近未来的な異世界も
なくはないけど
「これで、一年ぐらいしたら、
海水を抜いて水位を戻し、
また地上の生活を再開する」
「みんな一年も水上生活出来るのかな?」
「いろんな世界から転移強奪して来た
一年分の食糧もすでに積んである」
――ちょっと、天我くん、
いろんなとこから、いろんなもの
パクり過ぎじゃないっ!?
「でも、他の魔族とかはともかく、
これぐらいじゃぁ、魔王は……」
「そんなことは
言われなくたって
分かってんだよ、クソババァ
それ前回も言っただろ?
もう忘れたのか?ボケたのか?
さすがババァだなぁ、おい」
――ちょっと、
いくらなんでも酷過ぎない!?
なんで機嫌悪くなってんのよぉ?
「しかし、あのおっさん、
ホントムカつくわ
もう住むとこないんだから
素直に死んどけって感じだわ……
まぁ、これから、ちょっくら
また魔王ボコってくるからよ」
――前回同様、
敵勢力の大半を無力化して
数による圧倒的な不利を覆し
敵大将とのタイマンに
持ち込むってことね……
――えっ?
これ結構有り得る感じ?
よく考えたら結構いい感じ?
……なんかあの子に
感化されちゃってるじないですか、やっだぁ
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