第5話 予感
刑部と源は、パトカーに乗って現場へ向かっていた。時間が時間だけに、サイレンは鳴らさない。
源は窓の外に流れる風景を何ともなしに見ていた。先ほどの、警察署での顛末を思い出す。
「着信がありました。一緒に亡くなってた、恋人のスマートフォンからです」
火車の言葉。
「そりゃどういうことだ?」
刑部もやや狼狽した様子で答えた。
部屋内の空気が何とも言えない雰囲気に包まれた。時間的なこともあり、刑事一課室内にいたのは刑部、火車、そして源の三人だけだった。
「もしかしたら、犯人がスマートフォンを回収して――」
源が言いかけた時、再び火車の手の中にあるスマートフォンが鳴った。無機質な着信音が、部屋内に響く。画面に女性の名前と、カップルが仲睦まじく映った写真が表示された。男性の方は確かに、先ほど現場で確認した遺体の男性だ。
「……出てみますか?」
火車が恐る恐る呟いた。
「……ああ」
刑部が眉間にしわを寄せながら言った。
火車は電話にでると、皆に聞こえるようにスピーカーに切り替えた。皆固唾を飲んで耳を立てたが、何やらガサガサという雑音しか聞こえてこない。しかし、こちらから声を出すことも憚られるように思えた。
そのまま、数十秒が立ったが唐突に通話は切られた。
「……どう思いますか? 今の」
源が最初に言葉を発した。
「さあ。ただ、もう一度さっきの現場に行ってみようと思う」
源が刑部の方に目を移すと、先ほど脱いだばかりのコートに再び袖を通していた。
「疲れているところ申し訳ないが、もう一度付き合ってくれるか? 源」
刑部に言われなくてもそうするつもりであった。
「ただの勘だが、なにやら悪い予感がする」
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