第6話 銃声
比較的道が空いていたからか、想定よりも早く現場にたどり着くことができた。先ほどと同じように、駐車場にパトカーを停める。
相も変わらず、廃病院は不気味にそびえ立っていた。他の警官たちも既に現場を後にしている為、駐車場には刑部たちのパトカー一台だけだ。
「……現場封鎖で残っている者は?」
刑部が呟いた。
確かに、現場保存のために残っているはずの警察官の姿も見当たらない。立入禁止のテープやロードコーン、ポールが残されているだけだ。
「とにかく入ってみますか?」
「ああ」
二人は入り口から病院内へ入っていった。
中はとても薄暗い。先ほどは仮設の照明があるだけまだ良かったが、その照明も今は消されている。唯一の光源は、窓から差し込んでくる月光だけだ。
刑部がポケットから懐中電灯を取り出して点けた。青白い光が廊下の先まで照らす。倣って源も懐中電灯を取り出し、前へ向けた。相変わらず、湿ったような、陰鬱な雰囲気の場所だ。
源の脳裏には様々な考えが浮かぶ。
見張りの警察官たちはどこに?なぜ彼女のスマートフォンから着信があった?
犯人がスマートフォンを持っているとしても、なぜ電話をかけた?もしかしたら…
そのような考えは突如遮られた。
二階から、なにやら物音が聞こえた。
「今の聞こえたか?」
「……はい。足音だったような……」
二人はやや足早に廊下の突き当りの階段まで行くと、そのまま階段を昇った。勿論踊り場にあった遺体は回収されているが、血だまりはそのままだ。
踊り場も通り過ぎ、二人は二階へ到着した。この階は入院フロアになっているようだ。階段を中心に、L字型に廊下があり、病室が並んでいる。二階だけあり、一階よりは月明かりがよく入ってきているように思えた。見える範囲には、変わったものはなかった。
「そちら側を頼めるか?」
刑部がライトが照らす方向を見つめながら言った。
「はい」
源も答えた。
万が一、先ほどの着信が犯人からのものであったとしたら。そしてその犯人がこの現場に戻ってきていたとしたら。先ほどの足音の正体を突き止める必要がある。
二人は廊下をそれぞれの方向に進み始めた。犯人がいた場合を考えて、逃げ道を塞ぐ必要があるからだ。
手前にある病室から調べていく。室内には様々な物が落ちている。閉院後そのまま放置されたであろう備品や、肝試しに来た者たちが捨てていったゴミなど様々だ。
一室、また一室と順番に病室を調べていった。
源はこれまで経験したことないほど緊張していた。肌寒さを感じる気温であるにも関わらず冷や汗をかく。
何も見落とすまいと神経を研ぎ澄ます。刑部がいる方からもドアを開閉する音が聞こえる。
やはり刑部の方がペースが早い。
源も次の部屋を調べようとドアノブに手を掛けた時。
廊下に銃声が響いた。
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