第4話 ファースト・ビター

「ママはブラックだったよね」

オープンカフェで娘が運んできたトレイには

同じ二つのペーパーカップが乗っていた。

いつもの生クリームたっぷりのラテはもう飽きたのか。

どれどれこれが大人の味ですかと一口すする娘。

「にっが~。やっぱブラック無理~」

慌ててシュガーとフレッシュの封を切る。

「どうしてこんな苦いもの好きなんだろ」

そっか、そういうことね。

そういえば、あの人もブラック大好きだったな。

でもラテからいきなりはちょっと苦すぎるから

少しずつコーヒーに慣れていけばいいんじゃない。

私がそうだったように。


「ねえ、ママ」

娘の頬に少しだけ紅が差した。

「パパには内緒だよ」

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