物語は【????】へ続く。

「たく〜やってらんねぇぜ」


 不貞腐れたヴィットが酒をラッパ飲み。

 自分の部屋ではなく酒場を利用しているが、中には誰もいない。

 本人が貸し切っており誰もいないのだ。


「ちょっとハメを外したからって、謹慎扱いにしなくてもいいのによぉー。偶然だけど、彼の弟子の手助けだってしてやったってのに……」


 そう、彼は現在謹慎処分中(という設定)。

 ヒロインの姉妹や女神たちと危ういところまで行っちゃいそうになって、創造主(作者)の理不尽な怒りに触れてしまった。アワレナ主人公である。


「ちょっとしたお風呂あわあわ祭りや大雨で服のスケスケ展開が発生しただけなのに」

 

 ちょっとどころではないと思う。

 怒らせそうなので具体的なことは伏せておくが、ある日ことだ。

 創造主の気分がハイテンションで面白九割九分でえっちー回を導入しようとした。


 不得意ではあったが、創造主は見事に……というか勢いで書いて―――そこで我に返った。


 具体的な内容は省くが、例えばアワアワな風呂場が行われた女神と密着モミモミタイム。

 色気ムンムンで巨大な風船を所持する女神とのシャワーシーン。


 雨の中でスケスケのワンピース姿となった妹とのラブコメ展開。

 姉とのこっそりデートでの朝帰り……いや、あかんて。


 強制的な謹慎処分が決定となった。

 その代わり悪役も臨時休業になるので平和な日常が続いている。

 そしてやることもないので、こうして飲み屋を貸し切ってずっとヤケ酒をしていたのだが……


「で、今日はどういった御用で? 今更あの時の礼でもしに来たのか?」


「そう思うか? だとしたら相当酔いが回っていると見て、大事な話は今度にしてもいいが」


 突然カウンター席に現れた客人にヴィットはつまらそうに吐き捨てる。

 だが、相手も全然気にした風はなく適当に棚から酒瓶を取る。グラスも拝借して片手でキャップを外して注ぎ込んだ。


「金払って貸し切ってんのは俺だが」


「ケチ言うな。愚痴に付きやってやろうって言ってんだから」


「誰の所為だと思ってんだ。お前らが派手にやるからサービス精神な俺の仕事が減ってたんだろうが」


「さぁて? 誰だろうな? オレもそっち方面は疎くてな。よく分からんな」


「うわー清々しいほどの開き直りだなオイ」


 適当に相槌を交わして酒を飲む。

 かなり強めのやつであるが、相手は水でも飲んでいるように一気飲みしてグラスを置いた。


「さて、今さらという言葉は最もだが、このまま何もせず不貞腐れたままでも本当にいいのか? 名誉挽回とまでは言わないが、イメージ回復に挑戦しようとは思わないか?」


「正直に言ったらどうだ。人手が足りないから手を貸してくれとな」


「手が足りないから貸してくれ」


「即答か、まぁ暇だしいいけど」


 ヴィットも口にしていた酒瓶を置いた。

 さっきまでの酔っていた風が嘘のように鋭い目付きで彼を睨んだ。


「逃げた魔神共の拠点でも見つけたか? それとも弟子が魔神化しちまったか?」


「逃げた魔神共の方だ。ある異世界で感知した。どうやらオレの力を利用してるようだ。戦神の管理範囲だからオレ自身が入り込むと面倒になる」


「それでオレを……か」


 予想通りした話なのでそんなに戸惑いはなかった。

 相手の立場を考えれば動いていてもおかしくないし、忙しくて自分に助力を求めてに来るのも予想はしていた。


「いやだな」


「正直だな」


「当たり前だろう? こっちはMじゃないんだ」


 だが、やりたいかどうかは別である。

 彼だって好んで面倒事に巻き込まれたいとは思っていないのだ。


「報酬は約束する」


「内容によるな」


「そちらの女神たちも通してくれていい。話し合いに参加してくれ」


 一方的に要求が通るとは彼も考えていない。

 ヴィットの相棒である女神たちとも相談しない訳にはいかなかったが……。


「いや、もう来てるぞ? 二人だけだが……」


「なに?」


 ヴィットに言われて振り返ると確かに二人、いつの間にか立っていた。


「シロ―――白虎」


 一人は白髪の少女。

 ボーとした無機質な目でこちらを見ている。

 殺気は感じないが、纏っているそれは人外のものだと理解出来る。

 精霊の気配と一緒に神格特有の気配も混じっていた。


「アース───玄武だ」


 もう一人は黒髪の……何故か男性。

 男装している風でもなく、引き締まった筋肉質な体格の男性が獣のような眼光で突然の来訪者を睨んでいた。

 気配から彼も精霊の一種で神格持ちなのは明らかであるが、この世界にいる神格タイプは女神しかいない筈。不思議そうにヴィットの方を向いたところ。


「あー、アイツは特殊でな。玄武を司っているんだが……実は性転換してる」


「…………それ、誰得だ?」


「オレ得だ。『魔導神』」


 疑問をそのまま口にすると性転換したという女性―――男性が会話に参加してくる。

 困惑する彼に向かって堂々と告げた。


「女の体だと主人のエロい視線が鬱陶しいから男になった。なんか文句あるか?」


「ちょっ!?」


「……オイ」


「こ、こっちを睨むなよ! だ、だって仕方ないじゃん? 他の姉妹と同じで結構な美人だったんだから……!」


 ジト目で睨む彼にヴィットは慌てた様子で手を振って誤魔化そうとする。全然誤魔化せている気がしないが、居心地の悪い空気を意外にも破ったのは玄武という男性であった。


「まぁ冗談だけどな。単に省エネモードで楽したいだけだ」


「じゃあ、なんの為の嘘だったんだ!? 俺か? やっぱり俺の所為なのか!?」


「他の女神たちは忙しいから、とりあえずオレたちが代表で聞こう魔導神。そっちの内容を含めて話を始めてくれ」


「ご主人なのでまさかのスルー!?」


「ヴィット……どんまい」


「シロにもフォローされた!?」


 などなど、しばらくトークショーが続いたが、流石に終わらないと彼が話に移ろうとする。


「じゃあ『四神使い』―――正式な依頼をしたいが、構わないか?」


「何度も言うが、内容による。魔導神のジーク、そっちは何を取り引き材料にするんだ?」


「オレが依頼したのは魔神の潜伏している異世界の調査。レイにも頼んだから一緒に行動してほしい。そして依頼料は―――」


 腕を組んでジークはヴィットを見ながら告げた。

 その内容に相棒である二人の四神が驚いているが、ヴィットだけは不敵な笑みを浮かべて、楽しそうにゆっくりと頷いて見せた。





 物語は【元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。】へ続いています。


 

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