【通常営業その2】

アリサさんが口にしたが、スキルというのは魔法ことを指している。(俺は魔法使いではないが)

魔法スキルとも言うが、その内に鑑定スキルという魔法が存在している。(俺のは違うが)


魔法使いの魔法構成というのは人それぞれであるが、基本構成は4つである。


タイプとしては攻撃、防御、補助、回復。以下が基本の4つのタイプ。

見習い、初心者の魔法使いはまずこの4つから覚えるそうだ。

そしてその要素を昇華させ上位タイプへとなるか、或いは2つ以上合わせることで新たなタイプへと進化させる。


ただ、1人で学び修業するのは当然難しいのが現実である。


その際、家や師、学園など魔法教育を受ける者も多くいるが、そういった縁がない者のために冒険者ギルドでは、初心者用の教育実習期間が存在しており、冒険者などはそこで研修を受けることが多い。

あと冒険者でなくても金さえ払えば受けることも可能であるが。


「ハハハハっ、割と目が良い方なんで、鑑定みたいに中身もおおよそ把握できるんですよ」


───と褒められるが嬉しくなって、ついつい口が緩くなって、ペラペラ余計なことを喋ってしまった。


「ええ、その覗き見得意分野の所為で私とリアナの女性としての人権が何度も脅かされたものね?」


手元に美味しそうな手作りの果物ジュースを俺に渡してそう言うアリサさん。微笑む姿はまさに女神様のようだ。


「ハハハハハっ! いや〜〜ハハハ─────……………………」


大変おいしゅうございます。そして失言でした。

付き合い長いからな。まぁ色々あった。────


「特に驚いたのは去年のアレね。誕生日でもないのに突然私たちに服のプレゼントしたこと」

「……あ、あれは」


アリサさんに言われて思わず、目を逸らしてしまう。

た、確かにアレは俺としても、しょ、少々暴走したなぁーー? と思う一件であったが。


そう、あれは去年の今頃である。

俺は能力の強化を理由に、最近急激に成長を遂げたこの姉妹様の身体的な情報を全部、余すことなく調べ上げた時があった。


いや、ちょっとした興味本位であったが、まさかあれほどとは思わなかった!

本当すごいよ? さすが魔法とは別枠の常識外れの異能だ。


本当に余すことなく調べ上げたからな!? 身長とか体重はもちろんなことバスト、ウエスト、ヒップ、足の長さや細さ、指の太さとか余裕でさらに体調まで把握してしまったからな!(ただし、このレベルまで細かく調べる場合はなるべく近くで、全体をジッと見つめていないとできない)


あと、なにとは言わないが、まだか、そうじゃないかが分かってしまった時は亡者の叫びを上げて、カインや2人から病院に連れてかれそうになった。

全力で抵抗して逃れはしたが。


───それで、ついつい調子に乗ってしまったんだが、何を思ったか日頃の感謝を込めてアリサさんとリアナちゃんに服をプレゼントした。

当初は戸惑いながらも2人とも喜んでいた(その際カインが“あれ? オレの分は?”などと言っていたが、パンチをプレゼントしたら黙ってくれた)


で、問題はそこからであった。

感謝の言葉を述べて2人が紙袋から服を取り出してくれたんだが、取り出されたものを見て─────石のように固まってしまう2人がいた。


服自体は普通の女性物、少しお高い物だったが、別に変な服とか露出度が高いとかではない。

彼女たちが目に止めたのは一緒に付いていた物だった。


アレは俺が目で満遍なく調べた結果、店から用意して貰った一品なのだ! ─────!


「さすがの私も母親以外から、をプレゼントされるなんて初めてだったわ……」


服の上も下もそうだが、特に中身の上下も得た情報からカンペキに作ってもらったのだ!

それが地雷だと気付いたのは随分あとだったけど。


「で是非着てみてくださいって真顔で言われた時は……張り倒して憲兵に突き出してしまおうかと思ったわ」


最終的にはカインに助けれることになったが、あれはマジで死ぬかと思ったわー。

けど同時に顔や耳どころか首まで真っ赤にして恥ずかしそうに部屋に籠っちゃったリアナちゃんのフォローは本当に苦労した。反省反省。


「年頃の妹さんがいる前で大変失礼しました」

「わ・た・し・も、年頃の娘よっ! もうっ、もしあれが自作だったら問答無用で火柱の刑だったわ!」


その時のことを改めて思い出して、頰を薄く染めるアリサさん。

なんだかんだで最後には着てくれたけど、中の方については聞けなかった。だけど2人とも相当恥ずかしそうにしていたからたぶん。……うん。


けど、そこら辺も抜かりはありません。

ちゃんと専門の職人(女性の)さんに年齢とサイズを教えて、彼女達に合いそうなのをチョイスしてもらって、サイズが合わないところは作ってもらった!


その際、女性店員さんから冷たい蔑んだ目で見られたが、職人さんはノリノリだった。あの人はきっと同士に違いない。良い飲み仲間になれそうだ。


「凄いのはよく分かったけど、お願いだからハメを外し過ぎないようにねっ! 馬鹿やって憲兵の人アーバンさんに厄介になるようなことしないでよ?」

「あはははっ大丈夫ですよ〜〜」


アリサさんも心配性だな。俺だっていつまでも常識が欠落して、デリカシーがまったくないダメダメヴィット様じゃありませんよ?

結局その時も見ていたカインも喜んでいたし、偶に2人とも着てくれたから俺としては十分満足な結果だった。


それにちゃんとこれまでの仕置きのお陰で身に染みしてますから、今後はあそこまでブっ飛んだことはしませんよ。

…………思い出した瞬間、背筋が凍りついた気がした。

やっぱりお仕置きは怖いな。





「あの、すいません……」


と話している時、入口の方から女性の声が聞こえてきた。

珍しい時間のお客さんだなと思っていると、ドアが開いて女性がこちらに入って来た。


「あの……ここって、買取ってしてくれるんですよね? 今空いてますか?」

「あ、はい空いてま…………ハッ!」


入って来たのは紫色の短髪の女性でだった。

しかも驚いたことにアリサさんにも負けない超美人!

予想外の美女に思わず言葉を失う俺!!


アリサさんと同年代くらいか、少し年上風でいかにもお姉さんのような高身長で、足が長くてスラッとしている。


「───!」


……けど、この人。

服装は革製の上着と短パンだけなら、滅多に見ない美人と考えるが、よく見ると腰にナイフが差してある。

あと靴で隠れているが足首の辺りが膨らんでいるように見えることから、恐らくそこにも武器を仕込んでいるんだろう。


「へぇー」

「なにをジロジロと見ているのかしら?」

「へ? ───っあ、いや別に! なんでもないです!」


その軽装備なところを見ると冒険者か傭兵かなぁって、思っていると隣のアリサさんから疑惑の眼差しが!?

ち、違いますよ? 冒険者の観察眼がですね? ついつい動いちゃって……。


「ふふふふっ」


慌てていると女性の人がクスクスと笑って近寄って来た。あ、気付かれているよ! 恥ずかしいっ!


あと近付いて気が付いたが、胸元もスゴイ!

革の上着の所為で分かりにくいが、中のグレーのシャツが盛り上がっている。これはアリサさん級───っかぁあっぁあああっあああ!?!?


「ヴィット?」


ああああああ!? やめてぇぇぇぇ!? そこ抓ないでぇええええ!? ダメぇえええええええ!?


お客さんから見えない位置で、アリサさんからお尻を抓られてる。

しかもこの強さは強化魔法か!? あああっ!? どうしよう!? 新しい境地に目覚めそう─────


「……」

「ごめなさい。今すぐ切り替えますから、無言でフライパンを取り出すのはやめてください」


スミマセン。冷静になったので死神さまのご降臨だけはお許しください。

何処からともなく取り出したフライパンを片手に持つ、アリサさんの背後からチラチラ見える死神さまのお姿を見て冷静になったよ。


うん、アレは本当に怖いからね。でも恐怖で興奮状態から抜け出せたよ。


────『エ? ヤラナイノ?』


だから死神さまもお願いだから鎌を下ろしてくださいね?

そんな残念そうにチラチラ見せなくていいので、そのままお帰りください! 即座に!


────と、ふざけるのはここまでで。

仕事モードに切り替えてお客さんの対応を始めようとした。


「もう大丈夫?」

「あ、はい! すぐに見させて頂きま────」


既にテーブルに置かれた剣や槍に目を向けて、鑑定用のアナライズを────


「おっ?」

「え!?」


これには俺だけじゃなくて、アリサさんも驚きの声を漏らした。


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