第106話 トリプルデート(クリスマス)

 文化祭で今更恵がお化け屋敷が怖いという事が発覚してからというもの。


 真白の恵揶揄いが若干増えていた。


「鬼でも元ヤンでも怖いモンは怖いんだな。」


「わかっててやってるなら蹴るぞ。」


 最近では、その揶揄いがわかってきているのか、恵もビビりながらも反論・反撃するようになっていた。



「意識すると……その、なんだ。何をしていいのかわからんもんだな。昨年は仲間内でバカ騒ぎしてたわけじゃんか。クリスマスにしても初詣にしても。」


 真白が隣を歩く恵に問いかける。



「そうだな。大体カップルってこういう時何すんだよ。あたしらいちゃいちゃするガラでもねぇだろ。」



「いや、全体がというわけじゃないけど、大抵いちゃいちゃしてると思うぞ。」


「私達も解散したらきっといちゃいちゃすると思うし。」


 真白と恵の鈍感カップルの後ろから、と称した八百と澪のカップルもいた。


 さらに後ろに白銀と七虹のカップルも続いているのである。


 午前中の内に集まり、遊園地へとやってきた3組のカップル。


 夕方まで楽しんだ後、夕飯を食べた後は解散する予定である。






「おわっ、揺れる揺れるっ。」


 しかし恵のお胸は揺れていない。その場所に関しては震度1もないようだ。


 真白と恵の二人は観覧車に乗っていた。


 真白が席を移動しようとしたせいで、観覧車が若干揺れたのである。



「じゃぁ元の席に戻る。あっ。」


 真白がバランスを崩し倒れそうになると、真白は思わず手を出してきた恵の手を取った。


 そしてそのまま、真白は背を向けたまま元居た自分の席に、恵は手を引っ張られその真白の身体にダイブするように転んだ。


「ふぐぅっ」


 恵が声にならない声をあげた。


 現在、真白と恵の唇がしていた。


 まうすとぅまうすとか、接吻とか、キスとか、ベーゼとかそういうのではない。


 衝突である。


 かつてプールで人工呼吸はしている二人。


 しかし今回もだが、自分達の意志で重ねた事はない。


「血が……」


 顔を話した恵が呟いた。


 幸い恵からは出血はしていない。


「じゃぁ舐めとってくれ。」


「アホか。」


「俺の腿に馬乗りになってるから何も出来ん。だから……」





「あ、あの二人ついにやった。」


「いや、どうみても事故っぽいけど……」


 別の観覧車に乗っていた八百と澪が、のその様子を見ていた。


 そのようなツッコミをしていたため、その後については見逃してしまった二人である。


 


「ちょっおまっ。こんなんが自分の意志での初めてなんて認めんっ。認めんぞっ。を要求する!」


 真白の腿に跨った恵が、真白の肩を叩きながら抗議をしている。


 プールの時のは人工呼吸だと自身で納得しているため、二人の中ではノーカウントであった。


「あ、俺の血が着いちゃってる。」


 それはあの衝突の後に、もう一度重なったという証。


 やり直しを要求する恵の言葉が指す通り、先程真白は恵の頭に手をやり自分の方へと引き寄せていた。


 残念ながらツッコミをしていた八百と澪は見逃してしまっていたが。 


「もう一回すればお互い綺麗になるんじゃないか?」


「な・る・か・ボケぇッ!」


 恵が真白のこめかみに梅干しで反撃をする。


 痛みをこらえながら真白は恵の後ろを指さして……


「あ、おばけ。」


「どうわぁあぁっ!むぐっ!」


 怖くて驚きビクっと身体を震わせるとその勢いで真白に抱き着いた恵は、そのまま真白によって首を強制回転させられ、先程恵が言ったもう一回を強制的に行わされることとなった。


 事故を含めて本日3度目の密着である。




「柊君から……熱いね。」


「あいつら……クリスマスだからって、観覧車でってどんなエロゲー!?」


 別のまたの観覧車から見ていた白銀と七虹のツッコミであった。 

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