第十六話 そんなの関係ない。愛さえあればおーるおーけー
すっきり目が覚めた。今までにない程、身体が軽い気がする。これもきっと昨日、アイさんと話が出来たからだと思う。改めて、アイさんには感謝だ。
今日も変わらず、みんなと朝食を食べて、会場まで向かっていく。前に僕とアイさん。その後ろからケルヒとリスさんの並びで歩いていた。道に広がりすぎるのは悪いって事で最近はずっとこの並びで歩いている。いつも通り歩いている僕達だけど、ちょっとした変化もある。決勝まで残ったせいか周囲から注目されるようになってしまい、昨日あたりから声もかけられるようになってしまった。なんか有名な人になったみたいでちょっと恥ずかしい。
「ヴァン、今日もみんながお前の事、見てるぞ? 手でも振ってやれよ」
ニヤニヤしながらからかってくるケルヒ。もう、他人事だと思ってさ……。
「ケルヒ、うるさいよ。こんなの今だけだよ。すぐに忘れられるって」
「そんな事ない。この大会が始まる前からヴァンはチラチラ見られてた。そして初日の試合からヴァンは人気。特に女の子から」
リスさんの台詞にピクリとアイさんが反応する。あのぉ、表情がとても怖いんですけど。
「ヴァンさん、よかったですね。女性の方に人気だそうですよ?」
これって僕が悪いの!?
「え? えっと、僕は女性からとか人気がとか、気にしてないですよ?」
ちょっとしどろもどろになっちゃったけど、気にしてない事だけはしっかりと応えた。するとアイさんはニコニコ笑顔に戻ってくれたので、それで正解だったと一安心だよ。
「なんていうか……」
「さっさと付き合えばいいのに」
「「えっ?」」
ケルヒとリスさんの台詞に二人して振り向いてしまう。
「つ、付き合うとか……」
「リスっ! 何言ってるのよ! もう!!」
「ハァ。冗談よ、冗談」
あぁ、朝から顔が熱い。僕とアイさんが付き合う? そ、そんなの出来る訳ないじゃないか。僕は平民で、アイさんは王女様だよ?
「そんなの関係ない。愛さえあればおーるおーけー」
リスさん、何言ってるの!? 思わず、アイさんが固まってるよ!?
「愛、愛? アイ? あ、愛」
何かボソボソっとアイさんが言ってるけど、あまり気にしすぎない方が気持ち的にもよさそうだ。ここはからかわれたと思ってスルーしよう。
「ガウ。義兄上、おはよう。今日、頑張る!」
「ヴイさん、おはよう! うん、頑張ろうね!!」
タイミングよく、ヴイさんとも合流。何とかこの雰囲気を変える事が出来たようだ。
「それじゃあ行ってくるよ」
「ガウ!」
「おう、しっかり優勝してこいよ!」
「がんば」
「ヴァンさん、ヴイさん、頑張ってくださいねっ!」
よーし、頑張るぞ!
「帝国民のみなさま! ついに、ついに『双闘大会』、決勝戦となりました! これまで数々の熱い闘いを繰り広げられてきた、今大会ですが、驚きの出来事が起きております。なんと、無名のチーム『
今日は決勝戦にも関わらず、皇帝陛下からの言葉が無かった。終始無言。誰も何もいえない程、凄まじいオーラを放っている。おそらく? 僕達がここまで勝ち上がるとは思ってなかったんだろう。それがここまで勝ち残って、僕達にプレッシャーをかけているのか、双子を信用してて何もいう必要がないのか。どちらにせよ、やる事は一緒だから変わらない。
それにしても、善戦……ね。最初から負けは確定って思われてるんだろうな。まぁ、これまで全勝で来てるらしいし、歴代の『双魔魔法』も負けた事が無いらしいしね。もう勝つのが当たり前になってるのかな? けど、それも今日で終わりだよ。僕達が勝つんだから。
目の前には真っ赤な鎧を着た、クリサンちゃんとセアムちゃん。どうやらその鎧が戦闘服らしい。ところどころにリボンや、フリフリが飾られたその鎧はもはや鎧というよりドレスに近い。
「あらん♪ ヤる気満々ねん。嬉しいわん♪」
「ホントねん♪ アチシもヤる気になってきたわん♪」
舌なめずりしながら品定めをしてくる双子達。あれ、昨日も似たような感じになってた気がする。
「ガウ。あの二人、強い。けど、俺達、負けない!!」
こちらも闘志がみなぎっている様子のヴイさん。これは僕も頑張るしかないよね!
「先日は、このようなチャンスを与えてくれてありがとうございました。おかげ様で目標まであと一歩までこれました。それもお二人のおかげです。今日の試合は本気で勝ちに行くのでよろしくお願いします」
今日というチャンスを与えてくれた双子に改めて礼をいって、少し下がった。ここから必要なのは言葉じゃない。結果で決着を付けよう。
「会場も選手も気持ちが高まっております! それでは決勝戦を始めたいと思います! レディーファイ!!!!!!」
最高潮に観客席から歓声が上がった。その中には僕の仲間の声援も含まれている筈だ。よし、もはや、ここから出し惜しみをする必要はない。本気で行くとしよう。
僕が我へと切り替わる。ごめんね、あとは任せたよ。
「任せよ」
挨拶代わりに全力の魔力を解き放つ。勿論、『
「あら」
「あらあら」
ふ、我の様子にあちらも驚いているようだな。このような隙きを見せるなど、我を舐めているのか?
「吸排拳弐式『
素早く姉の方へと接近し、攻撃態勢に入る。
「もう既に試合は始まっているのだぞ? 吸排拳壱式『
そのまま腹を打ち抜く!
「わかってるわん♪」
すると、我の隣から妹がこちらを狙ってきた。誘われたか? だが、我は一人ではない。
「ガウ! そうはさせない!!」
「ふふ♪ 強そうな攻撃、ワクワクしちゃうわん♪」
我の攻撃に対し、両手を前に出して、防御態勢に入る。その程度で我の攻撃が防げると思ってるのか??
「防げるのよん♪ 『
ふざけた名をしておるが、我の『
「あらん♪ もう気付いたのね。そうよ、アタシ達はそれぞれ二属性使える、つまり二人で四属性、全ての『魔法』が使えるのよん♪」
妹の方を見てみると、妹の方は右目が白、左目が蒼くなっていた。それぞれの目の色に合わせた『魔法』が使えるという事か……? だが、それだけじゃない。そんな嫌な予感がするぞ。
まだ始まったばかりだが、この試合、すんなりとはいかんな。だが、最後に勝つのは我らだ。
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